盛り返す中国ゲーム市場 個人や中小の開発力に期待

2024-01-10 15:13:00

王焱=文写真 

日、ゲームは多くの中国人の生活「必需品」となっている。中国人の2人に1人がゲームユーザーといっても過言ではない。 

世界最大の市場の好転 

昨年秋のある週末、北京市の中心部から車で1時間ほどの場所にある北人亦創国際コンベンションセンターで、コンピューターゲームの祭典「核融合ゲームフェスティバル2023北京会場」が2日間にわたって開催された。初日は秋雨がしたたる中にもかかわらず、大勢のゲーマーたちが続々と会場に駆け付けた。会場内では数十社もの国内外のゲームメーカーが人目を引くブースを設営し、ハイスペックのパソコンや98インチの大型モニター、奇抜なデザインの周辺機器、そして最新のゲームがお試しプレーをしにきたゲーマーたちを迎えた。いくつもの有名ゲームブース前には長蛇の列ができ、最後尾でスタッフが「60分待ち」のプラカードを掲げている。熱気に包まれた場内に、夏に戻ったような錯覚を覚えた。 

中国のゲーム市場は回復期にある。一般的に中国は2016年に米国と肩を並べる世界最大のゲーム市場となったと考えられており、その規模は日本のゲーム市場の約2倍だ。だが22年上半期に新型コロナウイルス感染症による企業活動の制限と消費者の支出削減の影響を受けて、中国ゲーム市場の数々の指数に初めてマイナス成長が現れた。中国オーディオビデオデジタル出版協会のゲーム活動委員会が発表したデータによると、22年の中国大陸部ゲーム市場(香港、マカオ、台湾を除く。以下同じ)の実質売上高は前年同期比1033%(306億2900万元)減の2658億8400万元で、ゲームユーザー数は前年同期比033%減の6億6400万人だった。しかし新型コロナの影響が徐々に減っていった昨年からユーザーの消費能力が上昇に転じた。昨年1月~6月の中国大陸部ゲーム市場の実質売上高は1442億6300万元と前年同期比239%減だったものの、前期比2216%増で、底入れからの上昇は業界回復の重要なシグナルと考えられている。それとともにユーザー数も前年同期比035%増の6億6800万人という史上最多を記録した。 

「核融合ゲームフェス」は新型コロナの影響で20年と22年の開催が中止になったが、今では元に戻っている。主催の「機核ネット」が14年に開いた大規模なゲーマーオフ会は、17年からは北京、広州、成都などを毎年巡回するゲームカルチャーの祭典となった。ゲームの展示会として見ると、その規模は上海で毎年開かれる中国国際デジタルインタラクティブエンターテインメント展示会(ChinaJoy)には遠く及ばないが、巡回する都市の多さで勝り、活動も地に足がついて堅実的だ。昨年の北京会場の入場券は129元で、同年の東京ゲームショウの入場券(2300円)より高く、オンラインゲームプラットフォームSteamなら平均価格以上の新作を1本買える値段だ。主催側責任者の王世超さんによれば、1日1万人以上が訪れたという。 

「ゲームカルチャーを愛するゲーマーが主なターゲットです」と王さん。「ここでは各メーカーの新作ゲームをプレーできるだけではなく、有名なゲームプロデューサーと直接会話や交流ができ、また、難易度をハードに設定したゲームコーナーでは凄腕ゲーマーたちと勝負をすることもでき、ゲームの楽しみを存分に味わえます」 

中国製ゲームが主流に 

2000年代初頭、中国市場を席巻したコンピューターゲームはほぼ輸入品だったが、現在の「核融合ゲームフェス」に出展されているゲームの8割以上が中国自主開発ゲームだ。中国オーディオビデオデジタル出版協会のゲーム活動委員会のデータによると、昨年1~6月の中国大陸部市場における中国自主開発ゲームの実質売上高は1217億8400万元で、全体の844%を占める。同時期の海外市場における中国自主開発ゲームの実質売上高は82億600万だ。そのうち米国、日本、韓国が中国モバイルゲームの主な海外市場で、それぞれ3177%、1965%、850%を占める。 

中国製ゲームを語る上で、『原神』は無視できない。上海のmiHoYoが20年にリリースしたロールプレイングゲーム『原神』は日本を含む世界の市場で大成功を収め、わずか2年で累計売上高が40を突破した。注目すべきは、これほどの結果を出したゲームがテンセントやネットイースといった中国ゲーム業界の大手企業から生み出されたわけではないということだ。これによって業界内に無数にいるまだ創業段階の中小ゲームスタジオが奮い立ち、自分たちの手で次の『原神』を生み出したいと思い、スタジオに所属していないがゲーム開発の夢を持つ多くの個人もチャレンジを決意した。 

「核融合ゲームフェス」は成功を夢見る個人ゲーム開発者たちへ、自作品を実際にゲーマーたちにプレーしてもらう機会を提供している。「機核ネット」は19年から「BOOOM暴造」という小規模チームおよび個人開発者を対象にしたゲーム制作大会を5回開き、これまで数百本もの応募作品があった。今回のゲームフェスで、開発者たちは無料で提供された小さな独立ブースでゲーマーたちにお試しプレイをしてもらい、意見を聞くことができた。 

個人でゲーム開発 

個人ゲーム開発者のTirelessKorielさんもその中の一人だ。彼が「BOOOM暴造」に出展した『寄生綿毛』は、プレイヤーが芝刈り機を操作して緑色の大きな毛玉に生える綿毛を刈るという爽快感があってストレスを発散できるゲームで、対戦プレイも可能だ。 

TirelessKorielさんの本名は楊で、吉林省延辺出身だ。大学でウェブプログラミングを学び、卒業後、ソフトウエア開発の仕事に7、8年従事した。「もともとゲームが好きで、会社員時代にゲームエンジンに触れてから自分でゲームを作りたくなったんです。でもそんな時間はありませんでした」。昨年3月、楊さんは会社を辞め、「機核ネット」の大会を耳にし、ゲーム制作の道を歩み始めた。 

『寄生綿毛』は『ドラゴンボール』からインスパイアを受けたと楊さんは語る。大会前にアイデア出しで苦しんでいたある日、SNSに『ドラゴンボール』のあるシーンが流れてきたのを見て、「『界王星』を芝刈り機で刈ったら面白いんじゃないだろうか?」とひらめいたのだ。 

展示期間中は300人余りが楊さんの作品をプレーした。会場にはゲームの自由な評価を書いたシールを貼るボードが個別に用意され、『寄生綿毛』は200枚以上のプラス評価のシールを獲得し、うち20枚余りには「正式版が早くリリースされてほしい」ということが書かれていた。楊さんは「ゲーマーからここまで評価されるとは思わなかった」と興奮気味に語る。「それにパブリッシャーを名乗る人たちともウイーチャットの連絡先を交換できました。プレーをした人から直接意見を聞けたので、今後のアップデートに向けた新しいアイデアも生まれました」 

このゲームの開発中、楊さんの収入はゼロだった。現在の目標は今年の初め頃までに『寄生綿毛』のコンテンツを完成させて発売することだ。ゲームは買い切り型にして、価格は50元以内に収め、その売れ行きによって、個人でゲーム開発の道を歩み続けるか、新しい仕事先を探すか決めるつもりだ。「今後2年間、毎月1万元の収入があれば、現状を維持しつつ新しいゲームを発表できます」 

しかし楊さんは、「かなり難しい話ですが」とも口にした。巨大な市場があるとはいえ、現在流行している作品は、もともと影響力が高いネット企業が作ったものか、十分な資本をバックに派手な宣伝が可能なものだったりする。だが楊さんのような個人あるいは小規模チームのインディーゲームは発売する段になると、どうやって注目を集めるのかという避けて通れない問題に直面する。そのため、個人開発者や小規模チームの多くはパーソナルメディアで自分の作品を宣伝しようとしている。 

中抜きのないプラットフォーム 

「中国の中小ゲーム会社の生存環境は大企業と比べてあまり芳しくありません。全体的に予算が少なく、収入も低く、大々的に広告を打てないからです」。「核融合ゲームフェス」の「TapTap╳インディーゲーム」責任者の熊逸超さんは話す。今回、TapTapエリアは中小ゲームスタジオが制作した新作またはリリース前のゲーム44本を展示し、ゲーム開発者とユーザーが交流できるようにした。 

TapTapは2016年に発足し、月間アクティブユーザー5000万人を抱える中国最大級のゲーム配信プラットフォームだ。従来のプラットフォームと違うところは、TapTapは通常なら3050%に上る利益分配制をやめて、広告収入によって収益を生み出す仕組みにしたことだ。これによって開発者から大きな支持を受けた。『原神』が20年にリリースされた当初、最初の流通ルートに選んだのがTapTapだ。 

「整った環境のゲームコミュニティーづくりに力を入れ、開発者がゲーマーを見つけ、ゲーマーが面白いゲームを見つけるのを後押ししてきました」と熊さん。「利益分配とは無縁なので、ユーザーには高額課金するゲームではなく、面白いゲームを自然と薦められるようになっているんです」 

長年の経験を持つ熊さんに言わせると、中小ゲームメーカーであっても、反響が大きくてユーザーを獲得でき、かつゲームの質が悪くなければ、収入など大した問題にはならない。「クオリティーが高くてオリジナリティーがある作品ならば、開発者に人気とユーザーが集まるようなお手伝いを無料でやりたいです。多くの才能ある開発者の活躍は、さらに多くのゲームユーザーをTapTapに集めることになるわけですから」 

人民中国インターネット版

 

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