日本にとって、歴史問題にいかに対処するかが重要

2025-04-26 12:03:00

村山首相談話を継承し発展させる会理事長 藤田高景 

春たけなわ、野にも山にも花の香りのあふれる季節となりましたが、本日、「新時代の中国を読み解くシンポジウム」に、御出席されました、諸先輩の皆様に、心から敬意を表します。 

さて、本日は、3つの課題について、御報告したいと思います。 

A.先ず、最初には、村山談話の歴史的意義についてであります。 

1995815日、当時の村山富市内閣総理大臣は、敗戦50年の歴史的な節目に当たり、村山談話を発表しました。この談話は、閣議決定を経た政府の公式見解たる「内閣総理大臣談話」として重みのあるものとなりました。 

村山談話では「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」と日本による過去の侵略と植民地支配を、明確に認めました。 

そして「未来に過(あやま)ち無()からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、(中略)心からのお詫びの気持ちを表明」しました。 

村山談話は、中国韓国あるいは米国ヨーロッパなど、世界各国の人々や政府から、高い評価を受けました。 

それは、この談話が、簡潔な文章の中に、歴史を直視し、真心と信義を感じることができる、日本国憲法の前文に通じるものであったからであります。 

日本政府の歴史認識を、初めて包括的な形で内外に闡明したという点で、大きな歴史的な意義を持つものとなりました。 

一方、日本の国内の一部の保守右翼勢力の中には、こうした歴史への反省を「自虐史観」などと揶揄する向きもありますが、それは大きな間違いだと断言しなければなりません。 

過去に私たちは、アジアや中国に何をしたのか、その償(つぐな)いは果たしたのか、過去のけじめをつけたのかと謙虚に問うことこそ、日本の名誉につながるのです。 

逆に、過去の歴史的事実を否定し、侵略を認めないような姿勢こそ、この国を貶(おとし)めていることになるのです。 

私たち「村山首相談話の会」の最高顧問である、村山富市先生は、本年3月で、101歳を迎えられました。今も、お元気で、大分で暮らしておられます。今後も、ますます、お元気でご活躍いただき、歴代の日本の総理大臣経験者として、最も長寿を成し遂げられる事を、皆さんが願っておられます。 

村山先生は、いつも、私たちに、日本と中国が仲良くすることが、アジアの平和と発展のために最も大切な事だと、ご指導いただいて、まいりました。 

私たち「村山首相談話の会」は、村山富市先生の精神を受け継ぎ、これからも、村山談話を継承し、発展させる活動を、さらに発展強化させ、アジア諸国、とりわけ、中国との平和と友好の関係の構築に全力を注いでいく決意です。 

B.第2には、私ども「村山首相談話の会」が、取り組んでいる日中友好の取り組みについてであります。 

村山首相談話の会は、2013年に結成されましたが、2015年以来、コロナ感染症拡大で中断していた時期を除き、毎年、中国に友好代表団を派遣してきました。 

昨年、10月には村山首相談話の会の第8次訪中代表団が、著名な学者文化人も参加して、中国新疆ウイグル自治区の省都のウルムチや、トルファン、カシュガルを訪問しました。 

ウルムチとは、モンゴル語で、「優美な牧場」という意味です。新疆ウイグル自治区の首府で、全世界で海洋から最も遠い内陸都市です。ウルムチは、中華人民共和国成立後は、中国西北地区の拠点として開発が加速され、かつての優美な牧場だった地域は、高層ビルが林立し、道路が交錯して、貿易が盛んな都市へと姿を変え、新疆ウイグル自治区の政治、経済、交通、文化の中心として、飛躍的な発展を遂げています。私は、中国には、何回も訪問していますが、新疆ウイグル自治区には、今回が初めての訪問でありました。私の不勉強もあり、訪問するまでは、ウルムチは、シルクロードの街として、牧歌的な風景の残る地方都市かなとの先入観がありましたが、実際に訪問して、そのめざましい発展ぶりに、大変、驚かされ、我が身の不勉強を反省するところ、大でありました。 

ウルムチでは、新疆ウイグル人民政府幹部との意見交換を行いました。 

この中で、新疆ウイグル人民政府が、人民の雇用の確保を、最優先の課題として、雇用を優先する戦略を実施している状況について、詳しい説明を受け、中国において雇用の確保が地方政府の最重点の課題となっていること聞き、多いに勉強になりました。 

また、人民政府の皆さんから、中央政府の指導のもと、新疆は平和で安定し、歴史上最高の繁栄期を迎えている。最近、米国や西側のメデアの一部が、新疆に対して、ネガテブなニュースを流しているが、真実ではない。1100万人以上のウイグル族の人たちが、ここ、新疆で幸せに、順調に、生活していると説明された事が印象的でありました。 

また、イスラム教の学校やモスクも訪問して、各々、院長先生から案内していただきました。中央政府からイスラム教に対して、手厚い援助が実施されていることがよく分りました。 

現地で案内していただいた方々からは、かつて、1980年代、日本のNHKが、シルクロード特別番組を放映した頃には、多くの日本人の皆さんが、シルクロード探索をテーマにして、新疆ウイグル自治区への訪問があったが、今は、コロナその他の問題もあって激減しました。もっと、多くの日本の皆さんに訪問してもらえればうれしいという声を聞いた事が印象的でした。 

私は、シルクロードの地に位置する、新疆ウイグル自治区が、平和で飛躍的な発展をとげている生の姿を、日本の皆さんに、伝えていかねばとの思いを強めております。また、元来、シルクロードを愛する方が多い、日本の皆さんが、再び、シルクロードの地を訪問されるように、今後、日本の皆さんに、呼び掛けていきたいと考えております。 

C.第3には、第二次世界大戦終結80周年を迎える今、日本が歴史問題にいかに対処し、日本と中国の友好関係をいかにして深めていくかと言う事であります。 

今年は日本の敗戦80周年という、節目の年となりますが、これからのアジアの平和と繁栄の未来の構築のためには、日本と中国の平和、友好の関係を構築していく事が重要であり、それ以外の選択肢はありません。 

21世紀の日本と中国の友好を発展させる事については、さまざまな課題があるでしょうが、私としては、以下の点を強調しておきたいと思います。 

一つは、日本の若者はもっと「日本の近代史現代史」を学校などで、勉強する必要があります。 

大学の入試試験で、どんどん「日本の近代史現代史」を出すのも一つの友好な対策となるでしょう。 

もう一つは、両国の首脳間の交流も大切ですが、それと並んで、両国の民間交流を、さらに活性化していく事が大切です。民間の交流、地方の交流、そして日本と中国の将来を担う、青少年たちの交流、このような交流は現在もありますが、さらに規模を倍加して、積極的にすすめる必要があります。 

特に、青少年たちの交流に関しては、日本と中国の中学生や高校生などが修学旅行で、互いに、多いに訪問しあう事が重要だと思います。 

日本の高校生などの修学旅行では、かつては中国を訪問していたケースもかなりあったようですが、今は、下火(したび)になっていますので、再度、私は、この大切な取り組みを、大胆に復活すべきだと思います。 

もう一つは、中国から略奪した文化財を、中国に返還する事です。 

日本は、日清戦争(甲午戦争)日露戦争から日中戦争(抗日戦争)まで約50年間、中国に数次にわたる侵略戦争を行い、植民地支配を続け、その間に中国各地から石像石碑、青銅器陶磁器、仏像書籍絵画、考古資料など膨大な数の文化財を奪いました。 

しかも、日本は、中国から略奪した文化財のほとんどを未だに返還しておりません。 

世界的に見ると、すでに欧州などでは他国から略奪した文化財を返還する動きが始まっております。 

日本では、私も共同代表となって、2021年に「中国文化財返還運動を進める会」を、多くの学者弁護士社会運動家とともに、結成し、活動をはじめております。 

日本が自ら積極的に、中国から奪った文化財を返還することは、日本が平和国家を志向することを現実的に示す重要な取り組みです。今後、日本全国に呼び掛けて、この運動を発展させ、中国文化財の返還を実現させていきたいと決意しております。 

また、これまでの政権では停滞していた、政治家の日中交流が、石破政権になって、動きが出てきた事は、評価できます。日本の与野党政治家は、もっと、頻繁に中国を訪問して、中国の政府政治家と率直な意見交換を強化していくことが極めて重要です。 

民間の力、若者の力、政治の力、官の力、各界の取り組みの総和として、日中の友好関係を発展させていく事が大切であります。 

最後に、私は、今、改めて「日中友好こそ、日本の最大の安全保障の一つだ」と声を大きくして、世界に訴えていきたいと考えております。 

結局、アジアの平和と発展のために、肝となるのは、日本と中国の友好と連帯であります。 

戦争の準備に、ひた走るのではなく、平和の構築に全力を注ぐ事が、最も大切だという事を訴えて、私の報告とさせていただきます。 

有難うございました。 

  

  

  

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