レッドラインを踏み越えた高市首相の台湾地区に関する誤った言論
文=常思純 中国社会科学院日本研究所外交研究室副主任・副研究員
このほど、高市早苗首相は台湾地区に関する誤った発言を行い、台湾海峡への武力介入の可能性を鼓吹した上で、歴代政権の立場を変えていないと言い逃れをし、挑発的な発言の撤回を拒否している。中国共産党中央政治局委員・外交部長の王毅氏はこれに対し、「日本の現職首脳が触れてはならないレッドラインを踏み越えた」と指摘した。
複数のレッドラインに抵触
高市首相は中国の三つのレッドラインを次々と踏み越え、中国のボトムラインにあからさまに挑んだ。
第一に、これは「一つの中国」原則への挑発である。
台湾問題は中国の核心的利益の中の核心であり、中日関係の政治的基盤と日本側の基本的な信義に直接関係する越えてはならないレッドラインである。台湾地区は中国の領土の不可分の一部であるという事実は、かねてより「カイロ宣言」「ポツダム宣言」など国際的な法的拘束力を持つ文書で確認されている。中日の四つの政治文書における台湾問題に関する明確な規定は、日本政府が行った厳粛な約束であり、国際法上の効力を有する中日関係の政治的基盤である。高市首相の妄言は、「一つの中国」の根本原則に対する背信行為であると同時に、第二次世界大戦後の国際秩序に対するあからさまな挑発でもある。
第二に、これは中国の内政への無謀な干渉である。
台湾問題は純粋に中国の内政問題であり、どのような方式で台湾問題を解決し国家統一を実現するかは、完全に中国人自身の事柄であり、いかなる外部勢力からの干渉も許されない。高市氏は現職の首相として、あからさまに「台湾有事は日本有事」と宣言した。この振る舞いは中国の内政に直接干渉し、中国の主権と権益を侵害するだけでなく、「台湾独立」分裂勢力に極めて危険な誤ったシグナルを伝え、危機を扇動・助長して台湾海峡情勢をいっそう複雑かつ厳しいものとしている。
第三に、これは中国に対する武力威嚇である。
近代以降、日本軍国主義は「存立危機」を口実にして幾度となく戦争を発動してきた。1894年、日本は「朝鮮の内乱が日本の安全を脅かす」との口実で甲午戦争(日清戦争)を引き起こした。1931年、日本の侵略者は「満州を獲得できるか否か」を「日本の存立を脅かす」重要な問題と見なし、九一八事変(満州事変)を強硬に発動して中国東北部を占領した。1941年、日本の軍国主義勢力は「帝国の存続が危機に瀕した」との口実で真珠湾を奇襲し、太平洋戦争の幕を開けた。今回、高市首相は台湾問題を日本の新安保法制における「存立危機事態」と強引に結びつけ、中国の台湾地区と日本のいわゆる「安全保障上の利益」を関連づけようとし、台湾海峡への武力介入を鼓吹している。このようなレッドラインを踏み越える挑発的な発言は極めて危険であり、日本の平和憲法の核心的精神に完全に背き、地域の平和と安定に深刻な脅威を与えている。
背後に潜む悪質な企み
今年は中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年、また台湾光復80周年である。このような非常に敏感な時間的節目に高市首相が台湾地区に関する誤った発言を行い、撤回を拒否したことが、高市首相を代表とする軍国主義の復活を目論む勢力の野心を露呈させたことは疑いようがない。この勢力は「外部からの脅威」を喧伝することで、自国の軍事上の制約の緩和を推し進め、戦後体制の束縛から脱却し、日本の政治・軍事大国への急速なまい進を後押ししようと企んでいる。
長年にわたり「憲法改正の夢」「軍備拡充の夢」を抱いてきた高市氏は、首相に就任後、公然と憲法第9条の改正を表明し、「国家安全保障戦略」など「安保三文書」の早期改定、防衛予算の大幅増額、攻撃的武器の開発、武器輸出規制のいっそうの緩和を進めており、さらには「非核三原則」の改定を検討し、米国の核兵器の日本持ち込みを認める考えも表明している。高市内閣で防衛大臣を務める小泉進次郎氏は近日、中国の台湾地区からわずか 110 ㌔しか離れていない与那国島を訪問し、日本は期日通りに同島にミサイルを配備すると表明した。このように、高市首相は危機感を意図的に煽り、日本の軍事・安全保障政策の突破口を開くための政治的口実をつくり上げ、戦後日本の安全保障政策の重大な転換を加速させようと目論んでいることが分かる。
日本の直近の経済データによると、2025年の第3四半期の実質国内総生産(GDP)は前四半期比で0.4%減少し、6四半期ぶりに再びマイナス成長となった。同時に、日本国内のインフレ問題はいっそう深刻化し、国民の生活負担が継続的に増大している。高市氏は首相として、経済成長と民生改善に積極的に取り組むべきだが、それにもかかわらず憲法改正や武力強化、軍備拡充、戦争準備に執着し、強硬な発言を行うことで一部の支持者に迎合し、支持率を上げようとしている。このように外部の問題を扇動し、対外強硬姿勢を示すことでポピュリズム的な感情をかき立て、国内の矛盾を転嫁し、政権基盤を固めようとする行為は、かつて日本の軍国主義が自国民を傷つけた手段の一つでもある。
言行の誤りが自らを苦境に追い込む
歴史が繰り返し証明しているように、日本が直面している「存立危機」は外部に由来するのではなく、国内勢力が「危機」を名目に軍備を拡充し、武力を強化し、軍国主義の亡霊を蘇らせようとする危険な行為に由来する。従って、高市首相の台湾地区に関するでたらめな発言は必ずや自業自得の結果を招き、日本自身に災いをもたらすだろう。
この数日、日本国民は抗議活動を行い、高市首相に台湾地区に関する発言を撤回するよう強く要求するとともに、日本政府による平和憲法改正の推進に反対している。日本の大勢の学者も続々と声を上げ、高市首相の発言は日本政府の一貫した立場から大幅に逸脱しており、軽率かつ極めて挑発的で、憲法と国際法のレッドラインに抵触していると批判し、日本が再び歴史の過ちを繰り返さないよう強く呼び掛けている。さらに、日本の元首相の石破茂氏、野田佳彦氏、鳩山由紀夫氏も各種メディアを通じて高市首相の台湾地区に関する誤った発言を批判し、言動を慎むよう呼び掛けるとともに、対話を通じて中日関係の改善を推し進めるべきだと主張している。
高市首相の台湾地区に関する危険な発言は、中国人民の感情を深く傷つけ、中日の人的交流のムードを著しく悪化させ、両国の国民感情の基盤を深刻に破壊した。日本のメディアは、現在の情勢下において、中国の消費者や観光客から多額の収入を得ている日本の観光業、小売業、エンターテイメント業は極めて大きなダメージを受けると報じている。中国が日本への観光に関して安全注意喚起を発表した後、日本の経済学者は、日本を訪れる中国観光客の数が大幅に減少すれば、日本のGDPは0.36%落ち込み、経済損失の総額は2兆2000億円に達する可能性があると予測している。さらに、中日間の多くの交流イベントが中止になり、中国は日本の水産物の輸入を一時停止するなど、悪影響はより多くの分野に波及しており、元々行き詰まっている日本経済にいっそう深刻な衝撃を与えることとなるだろう。