次なる百年、中国は世界の大黒柱へ
拓殖大学教授 富坂聰=文
今年7月1日、中国共産党は建党105周年を迎えた。同じ7月に米国も建国250周年を迎える。一つの国の歴史のほぼ半分に匹敵する長い時間を、一つの政党が大国を率いてきたという歴史の重みに、あらためて気付かされる。
結党時に、約50人しかいなかった党員は、今105年の時を経て、すでに1億人を超えている。
かつて外国に侵略され、半封建・半植民地の状態に陥っていた20世紀初頭の中国では、多くの人には戸籍もなく、誕生日も定かでなかった。
この事実は、当時の中国がいかに深い混乱の渦中にあり、また厳しい政情の下で中国共産党という組織が生み出されたのかを物語っている。
つまり中国共産党は、そんな亡国の淵で救国の願いを背負って誕生した政党なのだ。
畢竟、中国には成立時から目指すべき姿が明確に存在していた。それは中国共産党が代々引き継いできた「使命」でもある。
外国人の視点で見たときの中国という国の一つの大きな特徴は、この「使命」が明確にあるという点だ。
明確な「使命」
では、その達成すべき目的や目標とは何だったのか。
それは今年7月1日、「中国共産党成立105周年祝賀大会」における習近平総書記の重要講話の中で触れられた、「『中国人民のために幸福を追い求め、中華民族のために復興を追い求める』という初心と使命」に他ならない。
また、その第一歩が「人民が主権を握る新中国を樹立」であった。
そして新中国成立から約70年後、中国共産党は新型コロナウイルス感染症と闘う中で「脱貧困」を宣言し、歴史的な課題であった絶対的貧困問題を解決した。
これは社会主義革命と建設時代からの初志貫徹であり、また改革開放後の目標である小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的な完成でもある。
党の100年の歴史を振り返れば、それは衣食にも困る{きゅう ぼう}窮乏に始まり、そこから「全面的な小康の実現」まで導いた歩みとなる。
5年前の100周年のときの習近平総書記の重要講話では、前半で100年前の苦難と中国共産党が「全面的な小康」を達成する、いわゆる中華民族の偉大な復興について、後半で次の100年の征途としての「奮闘目標」について、触れていた。
自信と冷静を保つ中国共産党
だが、いま目の前にある中国を「全面的な小康」という言葉だけで説明できているのかといえば、多くの外国人には違和感をぬぐえないのではないだろうか。
というのも現在の中国は、世界第二の経済大国として超大国・米国とも最先端分野で激しく競う立場にあるからだ。
実際、今回の重要講話では、前回の重要講話には見られなかった「わずか数十年という期間で、先進国が数百年間かけて歩んできた工業化のプロセスを駆け抜け、『経済の急速な発展』と『社会の長期的な安定』という二つの大きな奇跡を生み出した」との自己評価があり、そして、「今日、中華民族の偉大な復興は阻むことのできない勢いとなった」との自信も示されている。
また5年前の重要講話にはあった「われわれは人類文明のあらゆる有益な成果を積極的に学習・参照し、あらゆる有益な提案と善意の批判を歓迎するが、『教師面』をした居丈高なお説教は断じて受け入れない」という明らかに欧米先進国を意識し、反発するような表現は今回の重要講話からは消えている。
この背景には、何があるのか。おそらく世界は、昨秋から2度にわたって行われた米国のドナルド・トランプ大統領との首脳会談を経て、米中関係がある程度安定したことと同時に、中国が、未来の技術を巡る競争においても、一定の自信を持ったことによる余裕の反映だと受け止めたはずだ。
現在、中国共産党は、すでに新たな100年の「奮闘目標」という第2のステージに向けて動き出している。そして今回の105周年は、その最初の一つの節目だ。
前回の100周年記念のときと比較して、中国を包む世界の環境は大きく変わった。中でも注目されるのが、世界の安定に対する中国の貢献への期待だ。
中国共産党の認識はどうだろうか。
まず不可測性が増す未来について、重要講話では「戦略的機会とリスク・挑戦が並存し、不確定で予測困難な要因が増大している時期」とか、「『百年の変局』が加速する中、世界は新たな動乱と変革の時期に入り、人類は再び『どこへ行くべきか』という十字路に立たされている」という表現で警戒が示されている。
そうした不安定な未来に向けて、中国は一方で「重大な試練に耐える準備をしておく必要がある」としながら、もう一方では「人々の心の向かうところ、そして大勢の赴くところに順応し、平和、発展、協力、ウインウインの旗印を高く掲げ、全人類の共通価値を発揚し、新型国際関係の構築を推進しなければならない」と言及する。
まさに「人類運命共同体」であり「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ」で示された骨子だ。
世界の「大黒柱」に
今回の重要講話では明確には言葉にされていないが、前回の重要講話では中国が今後いかに国際社会と向き合うかについて以下のように触れられていた。
「平和・和睦・融和は中華民族が5000年あまりにわたって追求し伝承してきた理念であり、中華民族の血の中には他者を侵略し、覇を唱えようとする遺伝子はない。中国共産党は人類の前途と運命に関心を寄せ、世界のあらゆる進歩勢力と手を携えて前進しており、中国は常に世界平和の建設者、世界発展の貢献者、国際秩序の擁護者である」
繰り返しになるが、世界の平和が揺らぐ中、中国には「安定剤」としての役割が求められている。中国自身にもその自覚はある。その点は重要講話の中でも「社会主義中国は、『世界平和の建設者、グローバル発展の貢献者、国際秩序の維持者』として国際社会に広く認められている」と言及されている。
この認識が世界と共有されていることは世界各地で紛争が火を噴く中でも、ビジネスチャンスを求めて多くの多国籍企業のトップがこぞって北京に参集していることを見ても明らかだ。
中国の安定が世界の安定に貢献するのであれば、中国は次の100年では、単なる「発展途上国の現代化への先導者」ではなく、世界の「大黒柱(主心骨)」となることが求められるのかもしれない。
これまで世界をけん引してきた西側先進国と中国を比べたとき、その圧倒的な優位性は長期目標を達成する力にある。中国共産党が使命と目標を明確に定め、世世代代それを引き継ぎながらまい進する。多少の{う よ}紆余曲折があっても、着実に一歩一歩前へと進む。
中国共産党が揺るぎない奮闘者であることは、すでに歴史が証明している。
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