「大同」重視し安定図るべし

2022-09-15 16:56:53

日本財団パラスポーツサポートセンター理事長 小倉和夫=文


日中国交正常化から50年の節目を迎えた本年、日中両国の国民は、それが実現された背景、その歴史的意義、そして現在と未来の日中関係への示唆を、あらためてかみしめねばならない。 

現在の日中関係には、積極的側面と矛盾をはらんだ側面が混在しており、それだけに、安定した友好関係を築くためには、両国の国民が国交正常化の原点に立ち返って、冷静な目と温かい心をもって日中関係を構築していく決意を持たなければなるまい。 

当時の国交正常化交渉において、戦後処理の問題や台湾問題について、両国指導者の知恵と決断、そして国民の理解と友情によって解決されたといえる。 

 

1972年の国交正常化を記念して贈呈されたジャイアントパンダの返礼として、日本は中国に桜と松の苗木を寄贈した。筆者は左から4人目(写真提供・小倉和夫)   

しかし、これらの問題についての両国民の深い理解が進み、日中関係が安定するためには、航空協定をはじめとする実務協定の締結、平和友好条約の締結、中国における改革開放路線の実現、日本の対中国経済協力など、いくつもの段階を経た。言い換えれば、日中両国の関係正常化は、両国民と政治指導者、経済人、知識人などの不断の努力によって実現してきたものであり、その過程は、今日でも続行しているといえる。 

こうした過程は、日中両国の政治経済状況のみならず、国際社会の動向によっても大きく影響されてきた。 

今や、グローバリゼーションの下で、環境問題、感染症対策、難民問題への対処をはじめ、全人類的課題が浮上している。日中両国も、高齢化と福祉対策、子育て支援、経済格差の拡大など共通の社会課題に直面している。 

他方、世界の安全保障環境にも変化の兆しがあり、多くの国で反グローバリズムや偏狭な国家主義、地域主義の台頭がみられる。 

今や世界的大国となった中国と、アジアにおいて近代化のパイオニアとなってきた日本は、こうした世界の変化について、広く、かつ、深く対話を行い、同時に、国際社会において、責任を持つ大国として、手を携えて人類の将来のために行動せねばならない。そのためには、何よりも、両国民が日中両国の国際責任についての認識を深め、小異を残して大同につく精神をもって、両国関係の安定化に努め、両国に共通の課題についての対話と行動を促進せねばならないであろう。 

また、日中両国民は、今後の日中関係を考えるに当たって、2000年の長きにわたる両国関係の歴史を想起する必要がある。明治以降、過去150年ほど、日本が中国より軍事的、経済的、政治的に強国だった時期は、長い日中関係史において、例外的時期であった。明治時代以前の1500年以上、中国は通常日本より強国であった。中国が世界的大国となってきている今日、日本は、明治時代より前の歴史から学ぶべきものがあるのではないか。 

同時に中国も、2000年の長い歴史における中国と国際社会の関係、かつて偉大な大国として、アジア地域を中心に、国際責任を果たし、周囲の国々には、寛容であった時代が少なくなかったことを想起すべきである。言い換えれば中国と国際社会の真の「正常化」が今後の課題ではないか。  

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