北京での日本工業展

2023-05-23 15:35:00

 

忘れがたい夜

記者は、展覧会で働いている日本側の作業員たちをたずねて、北京滞在中の感想を聞かせてもらったが、かれらは口をそろえて、一口ではいえないけれども、中国の参観者の熱心さと中国側の作業員のいたれりつくせりの協力ぶりにはすっかり感心した、とりわけ開幕式の夜のことは忘れられないといっていた。

展覧会の総裁石橋湛山氏は開幕式の夜、中国各界の人士を招いて祝賀パーティーをひらいた。日本側の関係者は入り口にならんでひとりびとりの来賓を拍手をもって迎えたが、思いがけなくも周恩来(チヨウエンライ)総理の姿を発見して拍手はひときわ高くなりひびいた。


開幕式当日の展覧会場中央ホール
開幕式当日の展覧会場中央ホール

パーティーの友好的な気分がもりあがってきたとき、周恩来総理はたちあがってあいさつのことばをのべた。周総理は独立、平和、自由、民主、中立、繁栄をめざして努力している日本人民に敬意を表し、また、中国政府を代表して中日両国の国交正常化と両国人民の友宜の増進、両国の経済·貿易の発展のために努力しておられる石橋湛山先生を支持するむね話された。会場にいた日本の友人たちは熱心に、周総理のあいさつの一句一句に耳をかたむけ、なかにはノートを出して筆記している人たちもいた。

あいさつのことばがおわると、周総理は展覧団事務局長押川先生の案内で、各テーブルをまわって日本の友人たちと乾杯され、中日友好の気分はこのとき最高潮にたっした。周総理が杯をもってまわる先ざきでは、日本の友人たちは先を争って杯を高くさしあげ、かぎりない興奮にわきたった。

日本の友人たちはすっかり感動して、中国側の来賓の手をとり、「東京―北京」を歌いはじめた。周総理をはじめその他の中国の来賓も、手をたたいてそれに拍子をあわせた。

押川氏の話では、日本側の作業員たちはその晩ホテルへ帰ってからも、だれも休もうとしなかったという。展覧会開催の準備のためにつくしてきた数ヵ月らいの苦労もいっぺんにふきとんでしまった。テレビのスイッチをいれるとちょうどわらび座の公演がおわって、舞台と観客がいっしょになって「東京―北京」を歌っているところだった。かれらもまたたまらなくなって腕をくみ、中日友好をたたえるこの歌を声たからかに歌ったということである。


日本工業展覧会場の正面
日本工業展覧会場の正面

たしかに、中日友好は両国人民の共通の願いであり、この願いは両国の長い経済的·文化的なつながりを背景としている。

展覧会の文化館には、中日文化交流に関する資料や書籍が陳列されている。なかでも千二百年前に中国の鑑真和上が苦難のかぎりをつくして日本へ渡り、中国の文化をつたえたことを紹介した資料が目につく。また、正面のホールには小学生の習字帳や中国的な風格をもつ山水画、日本の仏閣にある仁王像や日本の労働者がつくった陶器の壺の写真などがならべられて、中国の観衆の感興をひいた。

各館を参観したのち文化館をへて門外へ出る観衆がだれしも受ける深い感銘は、伝統的な経済と文化のつながりをもつ中日両国人民の友好をもとめ、貿易の発展をもとめる願望はいかなる力をもってしてもさえぎることはできないということである。

中華人民共和国国務院総理周恩来氏はこの展覧会を参観して、つぎのような評価をのこされている。「日本工業展覧会の北京での開催は成功をおさめたと思う。この展覧会は日本の工業生産と科学の水準がこの数年らいすくなからず高まったことを示しており、わたしたちが学ばなければならないところである。

日本工業展覧会の開催は中日両国間の貿易の発展と文化交流に役立つものであり、中日両国人民の友好往来、中日両国関係の改善に役立ち、アジアと世界の平和に貢献するものである」

北京での日本工業展

日本の日中貿易促進団体と日中友好団体ならびに商社の共同主催で、北京に開かれていた日本工業展覧会は、十月三十日に閉幕した。こんどの展覧会は中日両国人民の友好を促し、相互間の理解をふかめ、貿易を発展させるうえに大きな貢献をしたといわねばなるまい。現在この展覧会の展示品はすでに上海へはこばれており、この十二月には上海で展出されることになっている。

北京での開催ちゅうに一二〇余万人にもたっした参観者は展覧会の展示品に興味をもったほか、日本の友人たちがアメリカ帝国
日本工業展覧会総裁石橋湛山氏が催した祝賀パーテイーには周恩来総理も出席して、独立、平和、自由、民主、中立、繁栄をめざしてたたかつている日本の人民のために乾杯された。

日本工業展覧会総裁石橋湛山氏が催した祝賀パーテイーには周恩来総理も出席して、独立、平和、自由、民主、中立、繁栄をめざしてたたかつている日本の人民のために乾杯された。

開幕式でテープに鋏をいれる北京市市長彭真氏
開幕式でテープに鋏をいれる北京市市長彭真氏

主義とその追随者のさまざまな妨害をけって展覧会の開催をかちとったことにたいして敬意を表していた。

中日両国の作業員の間にもひじょうに友好的な協力がおこなわれた。二〇〇余名の中国側説明係と日本側の技術者はたがいに密接な協力態勢をとって、参観者にたいして展示品のくわしい説明をおこない、また日本の技術者は中国の各関係部門の人びとと座談会をひらくなり、たがいに訪問しあうなりして経験を交流した。両国の関係者もしばしば接触して、両国間の貿易をいっそう発展させることについて話しあいをおこなった。

上一页12
関連文章