高速鉄道で変わる経済地図
PART 6 インタビュー 改革後の鉄道発展の行方
今年七十五歳の王夢恕氏は、中国工程院院士(アカデミー会員)で橋梁·トンネルの専門家だ。王氏は、中国人民政治協商会議委員を二期、全国人民代表大会代表を三期にわたって務めている。
三月十日、中国鉄道部の解体と再編が正式に発表され、中国の鉄道分野で最も著名な院士である王氏は、マスメディアの注目の的となった。多忙なスケジュールの中、王氏は本紙記者のインタビューに応じてくれた。
——このたびの中国鉄道部の改革は、今後の鉄道発展にどのような影響があると思われますか?
王 中国鉄道部はこれまで一貫して「半軍事化」の管理体制で運営されてきました。この相対的な「集権体制」は、中国の鉄道発展における最も強力な原動力でした。新しい改革案により、「鉄道行政と運営の切り離し」がなされた後、鉄道運営はさらに市場規律に準拠したものとなります。一般市民に身近なことを言えば、祝日や旧正月の帰省ラッシュ時の鉄道運賃が値上がりし、もしかしたら航空運賃よりも高くなるかもしれません。現在、中国鉄道旅客運送と貨物運送の運賃はともに低いため、改革後には、貨物輸送料も値上がりするでしょう。改革に先立ち、国家発展·改革委員会は、鉄道による一㌔ごとの貨物輸送料を一·五分(約〇·二三円)値上げするように求めました。今回の価格調整以前、中国の貨物輸送価格は三十年間も据え置かれていたのです。鉄道の企業化運営への移行後、こうした状況にもきっと変化が見られることでしょう。もし近い将来に、鉄道による貨物輸送価格が上昇するならば、全国の物価もそれに伴って上昇すると見込まれています。なぜなら、現状では物流の大半を鉄道が担っているため、物価と密接な関係を持つからです。
——二〇〇八年調整後の「中長期鉄道網計画」では、二〇二〇年までに、鉄道の総延長距離を十二万㌔以上に延長し、「四縦四横」の高速旅客運輸ルートを建設するという目標が設定されました。それには、高速鉄道を新設し、総延長距離を一万八千㌔以上に延長するという目標も含まれていましたが、中国の鉄道体制改革により、ここ数年、飛躍的に発展している鉄道建設が今後減速するという事態も予想されるのでしょうか?
王 鉄道建設は非常に重要です。米国の人口はわずか三億人余りですが、その鉄道の総延長距離は二十七万二千㌔に達しています。しかし中国は人口が十三億人ですが、鉄道の総延長距離はわずか九万八千㌔です。「中長期鉄道網計画」では、二〇二〇年までに、鉄道の総延長距離を十二万㌔にまで延長することを目標としています。今年も鉄道に対する投資額は六千五百億元に達し、建設が予定されている路線が五千二百㌔もあります。しかし現在の改革は、これまでの計画を直ちに中止して、再度調整し直す必要があることを意味しているのではないでしょうか。以前は国家による統一計画の下で鉄道を建設し、建設の指令が下れば、すぐに工事に入りました。しかし今では、まず協議しなければなりません。鉄道の建設速度があからさまに低下することはないかもしれませんが、中国鉄道総公司は、経済効果と収益の度合いを基準にして、建設する路線の優先順位を定めることでしょう。経済効果が高そうな路線、例えば京滬(北京—上海)高速鉄道のような路線は、早い段階で複線化されると思われます。
——短期的に経済効果は見込めないが、国家発展の側面からすれば必要であるような路線の建設はどうなりますか? 建設の是非についてどんなご意見をお持ちですか?
王 鉄道の企業化が始まった今日、中国鉄道総公司は収益の見込める路線から順に建設を始めることでしょう。採算の合わない路線は、投資額がかさむ割には収益率が低いもので、その中でも国家の発展にまさしく不可欠な路線ならば、国家の協力と援助が必要です。鉄道の発展を図るには、ただ短期的な経済効果だけに注目するのではなく、国家の経済発展に対する総合的な効果を見据える必要があります。例えば、一九九〇年代に建設された広西チワン族自治区の南寧市から雲南省の昆明市までを結ぶ南昆鉄道は、「国家最大の貧困扶助プロジェクト」と呼ばれていました。鉄道建設に入る前の沿線地域は、多くの平屋が立ち並び、険しい山道が続く、中国の最貧困地区の一つでした。しかし鉄道の開通後わずか一年間で、沿線付近の住宅は新たに建て替えられ、鉄道が現地に及ぼした絶大な経済効果を見て取ることができます。二〇〇九年には、南寧市から昆明市までを結ぶ高速鉄道の建設が着工し、二〇一五年に完成する予定です。
——ここ数年、中国の急速な高速鉄道の発展が世界からの注目を集めており、人々の移動手段にも大きな変化をもたらしています。高速鉄道の発展が中国に与える影響についてお聞かせください。
王 今年の「両会」に参加する際に、私は河南省の鄭州から北京まで高速鉄道に乗りました。所要時間はわずか二時間半で、以前は普通列車で四時間半もかかっていました。大きな視点から見ると、高速鉄道が社会と経済の発展にもたらす影響は非常に大きいと言えます。都市間および地域間の格差が、これまでずっと中国経済の発展を妨げる問題となってきました。現在では、高速鉄道の開通によって、都市間や地域間の交流を大いに促進することができます。近い将来、高速鉄道によって、中国各地における政策、資源、人材などの交流がさらに深まり、人口の分散と合理的な分布も大いに促進され、北京や上海などの大都会に人口が集中するという問題も解消されることでしょう。
(聞き手=張雪)
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