PART 5　東北三省発展へ結束促す

崔国璽=文 

昨年十二月一日、世界で初めて高緯度寒冷地帯に敷設された哈大（ハルビン——大連）高速鉄道が正式に開通した。東北三省を南北に走るこの高速鉄道により、人と人との距離だけでなく、都市間の距離も縮小し、さらに東北地区にある旧工業基地の経済地図も塗り替えられつつある。

■進む地域の一体化 

二〇〇三年、中央政府が東北旧工業基地の振興という政策を打ち出した後、東北地区での経済協力と産業構造の最適化が一気に加速している。しかし、経済基盤と地理的条件の格差が、「三頭立ての馬車（投資、消費、輸出）」の足並みを乱している。

「ハルビン—大連間の交通の大動脈が開通し、東北地区の主要都市や地域リーダーのけん引効果が、一層はっきりと現れるようになりました。『東北地区としてのまとまり』が、この高速鉄道の完成によって勢いを増しています」と、遼寧省政府発展研究センターの盧松主任は語る。

「哈大高速鉄道の開通によって、時間と空間的距離が短縮され、旅客と貨物の運輸能力と効率が向上しました。また、哈大経済ベルト地帯における生産要素の速やかな移動や産業の統合、産業のアップグレード、地域経済の一体化においても大きな役割を果たしています」と、盧主任は言い添えた。

これと同時に、高速鉄道の開通によって、既存の鉄道による運輸能力をさらに貨物列車へ振り分けることが可能になり、これまでは運輸力不足のために、道路運輸を余儀なくされていた貨物が鉄道によって輸送されるようになった。高速鉄道開通後の初期段階で、瀋陽—大連間では、貨物の鉄道運輸量が年間一千百五十万㌧増加、京哈線の瀋陽—ハルビン間では、年間一千万㌧も鉄道運輸量が増加し、今までの哈大鉄道の運輸力不足を補い、企業の物流コスト削減にも貢献している。

遼寧省社会科学院WTO研究所の張天維所長は、次のような見解を示した。交通システムの変更と改善は地域経済の発展を促す重大な要因で、地域にとって、交通運輸システムが円滑であるかどうか、またシステム自体が整っているかどうかが、その地域の経済発展のレベルを決定付けることにもなる。加えて、地域経済の一体化を進めるには、内部メカニズムからも地域の交通システムの合理的な変更と改善が求められる。哈大高速鉄道は東北の主要都市間の日帰りを可能にし、高速鉄道と高速道路、ハブ空港とを結びつけることで、さらに「乗数効果」も期待できる。

哈大高速鉄道は、瀋陽—大連間などという、飛行機には不得手の短距離区間で、高速道路よりも迅速な移動手段を提供している。高い運輸能力に加えて密度の高い、公共化された運輸システムにより、両地区において利用客、とりわけハイクラス人材の往来を加速し、市民の勤務地および生活範囲の拡大や資源配置の改善を進め、さらに両地域の住民の生活観念と習慣の変化をもたらし、二都市の一体化を効果的に促進している。

「哈大高速鉄道は東北地区の交通運輸以外に、都市構造の発展においても画期的な意義があります」と、東北師範大学の李城国教授は語り、また高速鉄道によって、東北地区の主要都市間の時間的·空間的距離が短縮され、東北地区が一体化する時代を迎えることにより、現在の都市および経済構造にも変化が起きるだろうとの見解を示した。

哈大高速鉄道の開通により、「北の氷の都」ハルビンから「ロマンの都」大連までの所要時間がわずか三時間半になり、既存の鉄道による所要時間の三分の一以下に短縮された。東北地区に位置するハルビン、長春、瀋陽の省都三都市が一時間経済圏内に入り、間もなく一体化が実現することだろう。

時間と空間的距離の短縮によって、異なる地域の「経済距離」が大いに短縮され、経済要素の移動も加速している。これは都市間の整合性を図る上で望ましいことだ。東北地区は長江デルタや珠江デルタ、京津冀経済圏に次ぐ新たな都市群になるかもしれない。

哈大高速鉄道の開通は多くの小さな町にも恩恵をもたらしている。哈大高速鉄道は吉林省の公主嶺と四平、遼寧省の昌図、開原、海城、蓋州、鲅魚圏、瓦房店などに駅が置かれ、三十分おきに列車が運行している。かつては、鉄道の運行速度を上げるために、多くの小さな駅が廃止されたこともあったが、哈大高速鉄道の駅は中·小都市にも設けられたため、地元の人々は鉄道による交通サービスを受けられるようになった。都市のライフスタイルを農村にも浸透させることは、都市と農村の「二元構造」の解消や、都市と農村の一体化進展に重要な意義を持っている。

■対外貿易の進展にも効果 

哈大高速鉄道の開通により、これまで日の目を見なかったプロジェクトにも目が向けられるようになった。数年前には誰も着手しようとしなかった大連市南関嶺のサービスプロジェクトが、高速鉄道のおかげで状況が一変し、脚光を浴びるようになったのである。現在、南関嶺への予定投資額は七十五億元に達し、総面積約百万平方㍍の都市総合体となっている。本部ビルはすでに機能し始めており、幾つもの大型ショッピングセンターの誘致に成功している。

「東北三省の内部において、哈大高速鉄道で交通網が整備されることによって、高速道路や鉄道そして空路が互いに補完し合うことができ、今では三時間以内で三省間を行き来することができますので、移動効率が大幅に向上しました。対外貿易の面から見れば、哈大高速鉄道の完成は、東北経済圏全体とロシアとの貿易に大きなメリットとなります。これにより、東北内陸部が対外経済貿易において脆弱であったという歴史的な経済的特徴を一変させ、輸出入貿易の構造整備を進めることができます」と、遼寧省政府戦略決定諮問委員会弁公室の趙治山主任は高速鉄道の効果について語った。

■週末に楽しむ高速鉄道の旅 

哈大高速鉄道の開通後、公共化が実現し、現在では三十分おきに高速列車が運行している。時速三百㌔で計算するならば、ハルビン—大連間はわずか三時間だ。哈大高速鉄道が開通する前から、旅行会社は早々に「高速鉄道で雪や海を楽しもう」というキャンペーンを展開した。

現在、遼寧省経済における「高速鉄道効果」はすでに現れ始めている。流行に敏感な観光業では、東北観光が今一押しのツアーとなっている。「今後、ハルビンから大連まで半日もかからなくなり、以前には三日かかった東北三省巡りの旅程も、今では一日で巡ることができます」と、旅行会社の職員は語る。

夏になると、瀋陽の団体ツアー客は、日中は大連のビーチで海水浴を楽しみ、夜には瀋陽に戻ることができるようになった。それゆえ、瀋陽では多くの旅行会社が高速鉄道による団体ツアーを企画し、「週末の高速鉄道の旅」を売り出している。「高速鉄道の速度が人々のライフスタイルを変化させた例の一つです」

しかし、「高速鉄道効果」はいわば諸刃の剣で、プラス面とマイナス面が共に存在する。米国に在住の都市計画プランナー劉源氏は、「高速鉄道の開通によって、移動が便利になり、地域間の生産要素の移動速度もあがりましたが、同時に資金や人材、情報などが、発展環境に恵まれた地域や行政効率が高い地域に集中することにもなります。そのため、投資環境が悪い地域は、人材や企業などが流失し、窮地に立たされるでしょう。これは高速鉄道経済がもたらす『マイナス効果』ですが、こうした課題にも注目すべきです」と指摘する。

【ミニ資料4】

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