高速鉄道で変わる経済地図
PART 4 中原経済飛躍へてこ入れ
陳学樺·董聘=文
昨年十二月二十六日、京広高速鉄道が全線開通した。この時、国務院が「中原経済区計画(二〇一二~二〇二〇年)」に関する回答を行ってからわずか一カ月後だったが、あっという間に勃興したこの経済ベルト地帯で暮らす一億七千九百万人の中原の人々の生活は、ひそかな変化を遂げつつある。
■各経済区を融合·発展
中原経済区は河南省を主体とし、山東、安徽、河北、山西などの省の一部も含む総合的な経済区である。これは沿海地域の発展の重要な支柱であり、中部勃興の重要な基地で、さらには長江デルタ、珠江デルタ、京津冀(北京·天津·河北)三大経済区に次ぐ国家クラスの重点開発地域である。京広高速鉄道は中原経済区を南北に貫き、その発展の重要なエンジンとなっている。
「高速鉄道は中原経済区と環渤海、武漢都市群、長株潭、珠江デルタなどの重要な経済区を最速六時間以内でつなげ、長さ二千㌔余の経済ベルト地帯を形づくり、各経済区間の融合と相互作用を大いに促進するようになりました」と、中国共産党中央党校経済学部の趙振華主任は語る。
高速鉄道でつながった経済ベルト地帯において、地域間の連動発展はすでに効果を見せている。
河南省三門峡市と陜西省渭南市は二百㌔余の距離があり、高速道路だと二時間かかる。鄭西(鄭州―西安)高速鉄道の開通後、両市の時間的距離は四十六分にまで短縮された。両市は各自の資源優位性を発揮し、新たな経済成長ポイントを見つけることができるようになった。「三門峡の果物加工会社は二〇一一年に渭南に工場を設立し、われわれの企業も三門峡に投資を始めています」と、渭南市商務局の責任者は語る。
以前、信陽市は河南省南部の無名都市だった。都市の発展は比較的遅れており、投資吸引力もさほど大きくなかった。だが、これは高速鉄道の開通により大いに改善された。信陽激藍OLED照明プロジェクトマネージャーの孫潤光氏は、「今まで会社の発展を制限していた産業付属設備に関する問題はすでに効果的に改善されています。高速鉄道の開通後は、瞬く間に武漢に到着することができるようになり、武漢にあるものは、信陽にもあると言えるようになりました」と語った。
高速鉄道は中原の人々の生活に大きな利便をもたらした。「大河ネット」のあるネットユーザーは、「ほんとうに速い。一時間で鄭州から信陽に着いた。これからは、週末に特に用事がなければ高速鉄道で実家に戻って、ふるさとの味を味わうことができるかな。昔は鉄道でも車でも田舎に戻るのは面倒くさいと思っていたけど、これはいい。しょっちゅう田舎の家に戻ることもできる」と、感想を書き込んでいる。
中原経済区の重要な機能の一つとは、各地域の調和的発展において、連結·相互作用を果たすことであり、現代的総合交通システム、特に高速鉄道の建設を加速することによって、東部、中部、西部の相互作用、相乗効果と共同発展という新たな発展構造の実現を促進することができると、中国社会科学院の数量経済·技術経済研究所の李青研究員は考えている。
■進む産業移転
交通は経済発展と生産要素配置の絆であり、懸け橋である。百数年前、ドイツの経済学者であるアルフレート·ヴェーバーは、工業立地論の中で、工業産業が集まるための第一の要素は運送コストであると言った。
二〇〇九年、京広高速鉄道の武漢—広州区間がまず先に開通した。高速鉄道の開通·運行が始まった後、郴州、衡陽をはじめとする湘南地区は、産業移転プロジェクト三千余を引き受け、開通から一年以内に、武漢は国内資本を七百億元余誘致したが、そのうち、珠江デルタからの投資が三分の一を占める。
郴州を例にすると、現在、湖南省南部に位置する郴州から高速鉄道で長沙、広州までいずれも七十分以内に到着できる。郴州は長株潭地域、珠江デルタの一時間経済圏に入ったことになる。
武漢—広州間に高速鉄道が開通した後の三年間、郴州では新たに敷地面積六百二十万平方㍍の標準工場が建設され、移転型の製造メーカーを千社ほど誘致した。外資の実際利用額は十六億二千二百万㌦で、国内の投資実行額は五百六十三億九千九百万元、対外貿易の輸出入総額は三十億七千万㌦に達し、それぞれ過去三年の一·六四倍、一·五三倍と二·三倍となった。
郴州産業パークに位置する湖南格瑞普新エネルギー有限公司は、最初から高速鉄道のもたらす効果を見込んでここに進出してきた。二〇一〇年、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池製造における国内トップ企業として、格瑞普新エネルギー有限公司は、多方面にわたる考察、比較を経て、三億二千万元を投資し、生産基地を郴州に移すことを決めた。標準工場を借り上げ、同年十二月末から順調に生産を開始した。
京広高速鉄道が河南省にもたらす波及効果は明らかだ。河南工業大学の姚文進さんは、河南省内のほぼすべての高速鉄道駅の近くで機能が異なる新区が計画されていることに気づいた。「それは、高速鉄道が産業を集め、沿線経済を活性化する極めて強い力を持つことをみんなが知っているからです」
高速鉄道は鉄道運送と道路、水路、航空運送とをつなげ、隙のないドッキングを実現した。これは資源の合理的配置に有利となるだけではなく、同時に産業チェーンを一所に集め、中間段階や物流コストを削減させるものであると、中国社会科学院工業経済研究所の陳耀研究員は説明する。
京広高速鉄道の開通によって、河南省は鄭州を中心とする内陸部の開放された要地となり、中原経済区の産業モデル転換と構造調整を加速させる推進力としての役割が期待されている。
あるネットユーザーは次のようにコメントした。「高速鉄道は高速の交通手段であるだけでなく、さらには高速の『経済回廊』である。かつては、大手企業はいずれも沿海部で成長を図ろうとしたが、現在は、先を争うように河南省に立地しようとする。河南省の交通アクセス面の優位性はますます際立ち、中原経済区は発展の真っ只中にある」
■中心都市の吸引力がアップ
京広高速鉄道によって、五大経済区だけでなく、首都北京と石家荘、鄭州、武漢、長沙、広州といった五つの省都も結び付けられた。高速鉄道によって、沿線各都市の位置づけと配置の再評価が行われ、中心都市の周辺地域に対する吸引効果が増し、資源争奪戦も激化し、集積と拡散という両極端が出現するだろうと、元鉄道部運輸局の趙春雷副局長は指摘する。
京広高速鉄道沿線の都市同士の競争は、「単独で戦う」のではなく、珠江デルタ、長株潭、武漢都市群、環渤海都市群がどれも「集団で戦っている」。
京広高速鉄道線上にある河南省の省都鄭州市は、従来から中原地域における重要な交通の要地だ。京広高速鉄道の開通によって、四方八方に通じる鄭州の鉄道網はスピードアップし、鄭州は新たな経済成長のチャンスに恵まれた。
昨年、国務院から認可を受けた「中原経済区計画」では、鄭州を中心とする九都市の統合と発展を加速させ、中原地域の都市群のけん引力を強化することが明確に提起されている。具体的に言うと、例えば、今年から鄭州市と開封市の金融業務の統合が推進され、年末までに鄭州——開封間の高速鉄道も開通する予定で、両市の一体化は着実に進められている。
同時に、鄭州——徐州間の高速鉄道も着工し、二〇一六年に完成する予定だ。その時には、この路線は京広高速鉄道と京滬高速鉄道を結ぶ重要な連絡線となるだろう。
鄭州と高速鉄道沿線にあるその他の都市との間で、同じ都市にいるような便利な交通圏が構築されると、一部の製造業はコストのより低い都市に移転し、産業の構造調整とモデル転換が促進される。鄭州の労働力も、就職地域と居住地域が分かれる、つまり通勤範囲が拡大するため、就職先は鄭州にあっても、居住地は鄭州郊外、あるいはより消費コストの低い都市に置くことが可能となる。都市間の遠距離通勤が可能となることで、周辺都市の消費と経済成長が促進されることになる。
鄭州のある私営企業で会計の仕事をしている朱少氷さんは、自分の「そろばん勘定」を打ち明けてくれた。「鄭州と洛陽とは高速鉄道でわずか四十分ですが、住宅価格には一平方㍍当たり二千元もの差があります。すると、私と夫が『週末夫婦』になるほうがよいという計算になります。鄭州で稼いだお金を洛陽で使うようなライフスタイルが幸せだと思います」
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