香港市民にとっての粤港澳大湾区「1時間生活圏」

2022-06-24 17:08:22

  「広深港(広州-深セン-香港)高速鉄道が開通して、香港西九竜駅から深セン市の福田駅まで20分足らずで行けるようになり、広州南駅にも50分ちょっとで行けるようになった。港珠澳大橋(香港・珠海・マカオ大橋)が全線開通して、香港から澳門(マカオ)まで40分以内になり、珠海に行くにも50分かからなくなった」。深セン市で自動運転プロジェクトの開発を手がける香港の若者の詹培勲さんは、同高速鉄道の香港区間が開通した時と同大橋が貫通した時のワクワクした気持ちを今でも覚えているという。新華社が伝えた。

 「粤港澳大湾区(広州、仏山、肇慶、深セン、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、澳門<マカオ>両特別行政区によって構成される都市圏)の『1時間生活圏』めぐりを楽しむ」、「深センで起業し、香港で生活する」など、2つのエリアの融合の可能性が詹さんのような起業家を奮い立たせている。詹さんは2020年に香港での仕事を辞め、投資者から創業者への転身を遂げた。詹さんが手がける自動運転プロジェクトは主にクローズドのパーク内での輸送に応用され、香港科技大学の実験室を飛び出して量産を実現し、今や150人あまりのチームを抱え、3回の融資を獲得し、製品は広州港をはじめ100ヶ所以上のパークで使用されるようになった。

 「マスク、除菌ウェットティッシュは、ネットで購入すれば安いしすぐ手に入る」と話す舒さんは家に親と子どもがおり、粤港澳大湾区の都市間輸送の便利さを肌で感じるという。「深センに倉庫がありさえすれば、新型コロナウイルス感染症の流行中でも、注文してから商品を受け取るまで2日しかかからない。お米もネットで買っている。内陸部産の丸いパールライスはおいしいし、感染症の流行中、香港ではずっと手に入らなかったから」と舒さん。

  中国銀行(香港)有限公司個人向け金融・資産管理部の陳文ゼネラルマネージャーは、「大湾区の越境市場のニーズがあまりにも大きい。それに応えるため、中国銀行は『全行員が越境業務を担当する』ことを求める。これには業務の末端に位置するカウンターでのサービス担当者も含まれる。私たちは大湾区に187の支店があり、3500人の行員がおり、越境業務を理解することは必須だ」と述べた。

  陳さんは、「かつての香港と広東の人の流れ、物の流れ、資金の流れは単純な往来が多く、1回だけ往復する観光客が多数を占め、単純な通貨の交換やクレジットしか行なわれていなかった。2019年に『粤港澳大湾区発展計画綱要』が打ち出されると、両地域の交流はますます多様化した。定年退職、医療、学校、不動産など多様なニーズがますます増え、一体化のニーズもますます高まった」と振り返った。

  陳さんは香港と大湾区の内陸部都市の間に出現した「1時間生活圏」に関して、「時々仕事で内陸部に行くが、ここ数年の内陸部の発展ペースは速く、電子化のレベルも非常に高く、外に出てタクシーを呼ぶのも、買い物をするのも、食事をするのも、何もかも電子決済になった」としみじみ感じたという。

こうした背景の中、中銀香港支店は大湾区で「口座を簡単に開設するサービス」を打ち出した。香港の顧客が内陸部で主流のスマートフォン電子決済応用アプリと口座をひも付けをすると、内陸部での消費やタクシー利用がスムーズに行えるようになり、大湾区で決済、ネットショッピング、振替を便利にスピーディに行ないたいという香港顧客の多様化するニーズに着実に応えている。

  統計によれば、21年末現在、中銀香港支店で内陸部の口座を開設した香港の顧客は前年比約41%増加して、17万人に迫った。大湾区の企業の資金調達は同9.8%増加し、科学技術イノベーション企業の資金調達は年率換算で8.3%増加した。現在、電子ウォレット「BoC Pay」の利用者は100万人を超える。

 陳さんは、「こうした大幅に増加する数字から大湾区の市場に可能性があることがよくわかり、香港市民が大湾区を評価していることがうかがえる」としっかりした口調で言った。

 KPMGの中国香港資本市場発展主管パートナーの李令徳さんは、「私が接触した業界はみな大湾区の発展による影響を感じている。自分の場合、KPMGは中国の29都市に32の機関を設立し、そのうち広州、深セン、仏山、東莞、香港、マカオの大湾区内6都市にはオフィスが7ヶ所あり、うち2ヶ所はここ1年余りの間に設立されたものだ」と述べた。

 李さんの説明によると、KPMGが4月に発表した雇用情勢調査研究報告書では、香港の回答者で「大湾区の他の都市に引っ越したい」人が年々増加し、19年は52%だったのが、22年は72%に達したという。

 

  香港の人々が大湾区の都市に移りたい主な理由は、「事業・業界発展の見通しが明るい」(63%)、「交通が便利」(62%)だ。また「賃金が高い」は54%で、「仕事のビジョンがより広がる」の50%を抑えて3番目の理由になった。

  香港と大湾区の内陸部都市が「1時間生活圏」を形成した背後には、ここ数年の数多くの重大越境インフラの建設と利用がある。同大橋、同高速鉄道、3本の高速道路が省間ルートとなり、香港に直接行けるようになった。

  通関のスピードが速くなり、効率もさらに向上した。深センの蓮塘/香園囲通関地が正式にオープンし、皇崗通関地の再建プロジェクトなども加速的に進められている。深セン湾通関地の貨物検査ルートは24時間通関を実現し、香港と内陸部は「シームレスな接続」へ向かっている。(編集KS)

「人民網日本語版」2022年6月24日

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