多様な文化育む山地と盆地 町歩きでパンダの魅力体感

2025-04-17 14:38:00

四川省の地図を広げると、この地が西部の高原や山岳地帯と、東部の四川盆地という全く異なる二つのエリアに分かれていることが分かる。異なる地形が、それぞれ独自の自然と文化を育んできた。四川の西部と聞いて、まず思い浮かぶのは、雪山や氷河、エキゾチックな雰囲気あふれる少数民族の集落だろう。一方、東部は空気に潤いがあり、豊かな植生が広がる楽園のような土地で、繁栄の歴史は数千年前にもさかのぼる。四川は全中国の中でも文化の差異が大きい地域の一つといえる。 

高原に響く氷と炎の歌 

四川の西部は、チベット高原の東南の縁と横断山脈の一部に当たり、アバ(阿チベット(藏)族チャン(羌)族自治州、カンゼ(甘孜)チベット族自治州、涼山イ(彝)族自治州の一部などが含まれる。ユーラシアプレートとインド洋プレートの相互作用と、かつての氷河の浸食堆積によって、南北に走る複数の山脈が形成され、山脈と山脈の間に大河が流れている。高い山と大河、深い峡谷が、壮大な地形を織りなしている。 

標高差が生み出す奇観 

四川省内の最高峰であり、横断山脈全体の最高峰でもある貢嘎(コンカ)山は、標高7500を超える。貢山の最大の特徴は、標高そのものではなく、相対高度にある。山の麓に位置する磨西鎮から頂上までは、わずか29しか離れていないにもかかわらず、その標高差は6000以上に及ぶ。これは、世界中の山々の中でも際立っている。 

麓の磨西鎮から車に乗って山を登り始めると、まず目に飛び込んでくるのは、大きな緑の葉を茂らせるバショウの木々だ。道路脇の農家は、何千本もの青々とした竹林に囲まれている。 

標高の上昇につれ、バショウや竹、ヤシの木は姿を消し、谷間の斜面には常緑広葉樹林が広がった。途中、バックパックを背負った登山者たちの姿が見えた。険しい道のりに汗ばみながらも、満足げな表情を浮かべている。山道をほんの数歩進むごとに変わるこの絶景は、平地では何千歩も歩かなければ出会えないものだからだ。 

山の特筆すべき点は、雪山や氷河だけではない。ここの植生や気候、土壌の垂直分布は驚くほど多様だ。研究者の調査によれば、貢山の東斜面や南斜面には、山麓から山頂にかけて七つのゾーンがあり、サブゾーンも含めれば10ものゾーンに分類できるという。磨西鎮から雪線に位置するロープウエー駅まで登ると、途中で見る景色は、広州市(沖縄県那覇市より緯度が約3度低い)から北極へ向かう途中で見える景色の変化と同じぐらいである。 

山東斜面の海螺溝氷河ロープウエーの終点には、展望台が設置されており、氷瀑と貢山の主峰を眺めることができる。ここでしばらく待っていると、にわかに雲が激しく動き始めた。強い風が吹き抜け、雲が西へと流れて、空にわずかな青色が見えた。やがてその青は次第に広がり、突然、望遠レンズの焦点がぴたりと合ったかのように、目の前の景色が一気にはっきりとした。ダイヤモンドのように凛と光り輝く尖頂が姿を現した。標高7508の貢峰だ。だが、我に返ってシャッターを切ろうとした瞬間、雲のとばりが再び降りてしまった。全てが、幻のようだった。 

千年続くイ族の祭りと郷土料理 

四川の西部には、チベット族、チャン族、イ族、ミャオ(苗)族など、多くの少数民族が暮らしている。それぞれの独特な民族文化の中で、多彩な伝統行事が生まれた。 

毎年7月中旬、涼山イ族自治州の冕寧(ミエンニン)県は、いつも熱気に包まれる。イ族にとって最も盛大な伝統行事の一つである「火把(フオバー)節」(「火把」は、たいまつの意味)が開催されるからだ。 

「農作物が豊かに実り、家畜が健やかに育ち、家族が安泰であることを祈る……」 

夜のとばりが降りる頃、イ族の祭司「畢摩(ビモ)」が、銅の鈴を鳴らしながら厳かに祝詞を唱え始めた。120人の使者が、たいまつと布製の黄色い傘を手に、中央にある大きな薪へと進み、時計回りに巡った後、それに火をつけた。火の粉が赤いホタルのように夜空に舞い上がっていった。 

人ごみの中で、あるおじいさんが幼い孫に、火把節の由来に関する伝説を語り聞かせていた。 

「昔々、天の神が地上に蝗害(こうがい)を下したとき、旧暦6月24日にイ族の勇士が松の枝やヨモギを集めてたいまつを作って、その火で害虫を焼き尽くしたんだ」 

千年以上燃え続けてきたこの火は、邪を払い、幸福を祈る儀式であると同時に、先祖の知恵への敬意を示すものでもある。 

突然、広場の端から激しい太鼓の音が鳴り響いた。音楽が流れ、人々は炎を囲んで踊り始め、祭りの喜びに身を委ねた。 

ほかの地域とは異なり、冕寧県では、火把節と共に、もう一つの特別な催しがある。それが、同地の独特な「火盆焼肉祭」だ。街の通りに約300卓もの火盆焼肉の屋台が並び、子黒豚、地鶏、高山ジャガイモなどの食材が炭火の上でジュウジュウと音を立てる。漂う香ばしい匂いに誘われ、人々は火盆の周りに腰を下ろし、熱々の焼肉を頬張りながら、祭りのにぎわいを楽しんだ。立ち上る湯気に、人々の赤らんだ顔がぼやけて見えた。 

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