多様な文化育む山地と盆地 町歩きでパンダの魅力体感
パンダが語る共生の物語
春熙路にあるIFS国際金融センターの建物を見上げると、1頭の巨大な「パンダ」が屋上によじ登ろうとお尻を突き出していた。黒と白のステンレス鋼で作られた体が太陽光を反射して輝く。近くでは、パンダのキャラクターのカチューシャを着けた女の子たちが笑顔で手のひらを上に向け、この重さ13㌧の「壁のぼりパンダ」を持ち上げるようなポーズで写真を撮っている。
四川といえば、まず「パンダ」を思い浮かべる人が多いだろう。特に成都は今、「痛車」や「痛バッグ」にちなんだ呼び方である「(パンダの)痛町」として、若者に親しまれている。
IFSビルの7階に上がると、「壁のぼりパンダ」を正面から見ることができる。ここは朝早くからパンダファンたちが列をつくって並ぶほど、大人気の写真スポットだ。
屋上から見下ろすと、白黒の車体にパンダの耳を付けた「パンダバス」が停まっていた。この観光バスは、本物のパンダに会える成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地に行くのに便利な交通手段だ。
ここから華興街を西へ進み、暑袜街へと曲がると、巨大な「パンダ郵便局」の看板が目に飛び込んでくる。ここでは、親友や未来の自分へ手紙を送ったり、パンダ関連のオリジナルグッズを購入したりできる。さらに、スタンプ収集が趣味なら、手帳を持参し、ここでしか手に入らないかわいいパンダのスタンプを集めることもできる。
郵便局の近くでバスに乗り、鎲鈀街に着くと、白壁に描かれた巨大なパンダのグラフィティアートが目に映った。絵の中で、パンダは色とりどりの商品が並ぶ棚の前に立ち、大きな窓から体を乗り出している。そこから200㍍ほど進むと、有名な「パンダ書店」がある。店の入口には、人の背丈を超える丸々としたパンダの像が、片手に傘を持ち、いたずらっぽい笑顔を浮かべている。
店内に入り、愛らしいうつぶせ姿のパンダケーキを注文した。スプーンを持ち上げ食べようとしたとき、シェア自転車に乗って窓の外を通り過ぎる観光客の姿が目に入った。自転車の籠には、小さなパンダのぬいぐるみがちょこんと座っていた。
成都の町を歩いてみれば、あちこちでパンダの要素に出会える。19世紀に四川省雅安市に生息しているパンダが初めて世界に知られて以来、パンダ文化は徐々に四川の人々の生活に深く溶け込んできた。
その背景には、何世代にもわたる人々の努力がある。ジャイアントパンダの繁殖と自然復帰、生息地の環境保護、法律や政策の整備など、パンダ保護のために尽力してきたのだ。
早朝、林紅強さん(39)は、ゴム靴を履き、なたを手に取り、日よけ帽をかぶり、同僚たちと鄧生保護ステーションから出発する。
「今日からパンダ渓谷へ行きます。6日間はかかるでしょう」と言いながら、林さんが前方を指さす。「ほら、あっちの方向です。保護ステーション範囲内の一番遠い村を越えたら、パンダ渓谷です」
2010年、大学を卒業した林さんは、ジャイアントパンダ国家公園四川臥龍国家級自然保護区でパトロール隊員の仕事を始めた。
「保護区域内には、ジャイアントパンダの固定観測ルートが64本定められています。そのうち19本を私たちの保護ステーションが担当しています」。歩きながら林さんは話を続ける。「3か月に1回、私たちは管轄エリアの観測ルートを巡回します。パンダなど野生動物の痕跡を記録し、不法侵入行為を発見すれば取り締まり、パンダとその生息地の生物多様性を守る、それが私たちの使命です」。現在、このようなパトロールは、すでに制度化された仕事となっている。
小さな川を渡って緩やかな坂を登り、パンダ渓谷の森へと入ると、竹林が生い茂り、太陽の光さえ遮られるほどだ。
「見てください。これは時間がたったパンダのふんです」
林さんは1本の木のそばで立ち止まり、目の前のふんを指さして言った。「もし新しいふんだったら、採取して、検査や技術分析を行うんですけどね」
パトロールの仕事のほかに、林さんは野生パンダのDNA個体識別やデータベースの構築、アルビノのパンダの行動調査など、専門的な研究にも携わっている。
そして近年、林さんはもう一つの仕事を担当するようになった。それは、研修活動の参加者を受け入れ、パンダや自然知識の教育を行うことだ。
「学生たちはパンダに興味津々で、『パンダは1回の出産で何頭産むの?』『巡回パトロールでは何をするの?』などと、質問が止まらないんですよ」と林さんはほほ笑む。
「保護ステーションで保護区の概要を説明した後、彼らをパンダの生息地へ案内し、現地でパンダの習性などを教えます。時には、保存してあるパンダのふんを見せることもあります」
こうした自然教育を通じて、学生たちはパンダについて理解を深め、保護意識を高めることができるという。
「私たちの努力が実を結び、野生のジャイアントパンダの個体数が少しずつ回復していくことを願っています」
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