折り紙のバラ

2023-02-23 10:46:00


鄒源=イラスト

非珍=文

タクシーは飛ぶように走り去り、彼の手は無意識のうちにポケットに入っている折り紙のバラを触っていた。 

貧乏人の子どもは早々に自活する。大学進学は彼の夢であり、その夢は実現した。 

「あなたが折ったの?」。彼が999個の折り紙のバラをささげたとき、彼女は理系男がこんなに細やかな心遣いを見せたことに驚いた。 

「僕が折ったんだ。君にあげる」 

彼は交通費を節約するため、しばしば時代遅れのゲームをした。バラの折り目のところに字を書いて、実家に帰省するかどうか決めたのだ。次第に彼自身で決められないときには、バラを折って決めるようになった。 

このとき、彼はきつくそれを握りしめ、直接駅に向かって歩いていった。彼は心のうちで密かに何かを期待していた。彼は真っすぐにカフェ「サタデー」へと向かった。彼はいつもの場所に座り、彼女が好きなカプチーノを頼んだ。 

髪の長い彼女は同じ大学に通っている丸顔の女の子で、澄んだ瞳を持っていた。そのとき、彼らはキャンパスのカップルが皆そうであるように、退屈な学校生活を蜜のように甘く過ごしていた。 

卒業間近になり、彼は大学院の試験に合格し、別の都市へと行かねばならなかったが、彼女は生まれ育った町に戻ろうとしていた。その日、彼と彼女は最後に「サタデー」に行き、カップに入ったコーヒーを飲んだが、喉につかえるように感じた。 

彼は紙で折った赤いバラをテーブルの上に取り出し、今まで幾度となくやってきたゲームをした。 

「君が先にやって」 

「あなたが先よ」 

毎回、彼は彼女にはかなわず、軽く手の中のバラを回し、口元に持っていって息を吹き掛けた。回っていたバラがやがてゆっくりと止まり、彼は重荷を下ろしたかのように彼女の方に向いた花弁を指し、手に取って見てみるよう促した。 

彼らはもともと同じ場所で一緒に頑張ろうと話し合っていたが、彼女は彼が優柔不断で「一緒にいる」と「別れる」を前にしたとき、大学院進学を選ぶと分かっていた。 

後に、彼らは同じような方法で、乗る電車を決めた。彼女は早朝7時発の電車に乗ることにし、彼の電車は彼女よりも1時間遅かった。 

翌日早朝、彼は興奮して駅に入っていった。彼は力強い足取りで列車に飛び乗り、車両にいる見知らぬ顔を一つ一つ見渡しながら、突然やってくる喜びを夢想していた。列車が走り出そうとした瞬間、彼は狂ったように、震える手でよく知った番号にかけると、携帯電話からは通話中の音が聞こえてきた。彼は彼女と一緒にいることを選び、7時発の電車に変更したのだった。 

同級生の結婚式に招待され、彼はこの町に再び足を踏み入れた。長い時が過ぎ去り、彼女はもうとっくに結婚したと聞いた。でも彼にとって、出会う女性の誰もが彼女と比べようがなかった。 

同級生が念押しの電話をしてきたとき、電話からにぎやかな声が聞こえてきた。彼女は来ているだろうか?傍らのガラスに彼のぼやけた影と、わずかにはげ上がった額が映っている。 

彼はポケットから自分のぬくもりを帯びたあの折り紙のバラを取り出し、カフェから出た。風が吹き寄せてきた。道行く人々は、背の高い痩せた男が、風に舞い上がるバラを追い掛けては数歩歩き、また止まったかと思うと目に涙を浮かべ、茫然自失に陥った子どものようになっている姿を見たのだった。 

折り紙のバラのどの花びらにも同じ文字を書くという手段を、とっくの昔に彼女が見破っていたことを彼は知らなかった。あの夜、彼女は彼を愛するあまり、1時間遅い電車に変更していたのだった。 

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