中米貿易摩擦—-「四面楚歌」の米国、利害一致の多い中日

2020-02-21 12:23:47

——今回の中米貿易摩擦から、1980年代の日米貿易摩擦を想起した人も少なくないと思います。二つの貿易摩擦にはどのような共通点と相違点があるでしょうか。今回の中米貿易摩擦で、日米貿易摩擦を教訓にすべき点はありますか。 

江原 共通点というより相違点が際立っています。共通点としては、米国の都合が全面的に押し出されている点ですが、ただ今回は、米国大統領の都合が優先されている点と米国国民、議会に反対の声が多いところは相違点と言えます。このほか相違点としては、

1、80年代の日米貿易摩擦は日本と米国の2国間にほぼ限定されていたが、現在の中米貿易摩擦は、影響が多国間に及んでいること

2日本と米国は同盟国で特殊な関係にあり、日本側が対米輸出の自主規制(乗用車等)を行ったが、中国と米国は大国関係にあり、中国は交渉において、当時の日本に比べはるかに対等な関係にあること

380年~90年当時は現在のように世界的なサプライチェーンがまだ形成されていなかったことから、世界経済に対する影響が今より限定的であったこと

4日本企業が海外進出する大きなきっかけとなったが、中国はすでに世界第2位の対外投資国外資導入国となっており、今回の貿易摩擦では、多くの国が中国と利害を共有していること

5目下中国は世界最大の発展途上国であり、世界第1位の貿易大国であり、さらに世界120カ国が中国を主要貿易国としているなど、中国の世界貿易における影響力、今回の貿易摩擦の世界的影響が当時よりはるかに大きいこと

 などが指摘できます。

  日本は80年代から90年代にかけ、貿易黒字減らし策として積極的に輸入促進策を実施しました。輸入促進策としては、予算的措置、輸入促進大規模展示会の開催、対日アクセス調査(日本と各国の規制等の比較)、専門家の海外派遣(セミナーワークショップの開催、対日輸出促進に関する生産デザイン指導、当該国からの視察団の受入企業訪問の実施など)などによる、日本市場で歓迎される製品情報の提供、製品づくりの技術指導、対日輸出機会の創出支援などを実施してきています。

  当時とは時代的背景、グローバルガバナンスの形成における米国の影響力などが異なっており、単純な比較はできませんが、対米貿易摩擦で日本が輸入拡大策で対応した点は、中国が今年11月に上海で開催する国際輸入博覧会の意義に通じるところが少なくありません。

  世界経済ガバナンスの形成に積極的に参画しつつある中国での同博覧会の開催は、当時の日本の対応に比べて多国間貿易体制の維持、反保護貿易主義の側面がより強調されており、世界経済の今後の行方に大きく貢献すると期待できます。国際輸入博覧会の開催に留まることなく、最近の中国は輸入促進策や対中投資のさらなる開放策を発表するなど、アメリカファーストの対極的措置を講じている点は、日本企業や世界の支持するところとなっています。

 

トランプ大統領は関税により欧州連合(EU)からの自動車輸入を制限すると宣言しており、自動車製造大国である日本にも懸念が広がっている 

——以前、米国の輸入自動車に対して高い関税を課すとの発言は、日本の自動車業界に恐慌をきたしました。今回の中米貿易摩擦は、日本にどんな影響を与えるでしょうか。

江原 中米貿易摩擦は、サプライチェーン大国である日本への影響も少なくありません。例えば、多くの日本企業がすでに対中進出していますが、こうした在中日本企業は、中国の付加価値ベースでの対米輸出に最も貢献しているとされています。中米貿易摩擦で中国の対米輸出が縮小すれば、例えば日本の中間財の対中輸出に影響が出ることは想像に難くありません。また、日本の自動車および同部品に広範な輸入関税が課せられると、日本の対米主要輸出品目(昨年度の対米輸出額の約40%、輸送設備部品を含む)であるだけに、同業界には大打撃になると考えられます。今回の中米貿易摩擦は、日本と中国の間で利害が一致するところが少なくない一例といえるでしょう。

 

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