中米貿易摩擦—-「四面楚歌」の米国、利害一致の多い中日

2020-02-21 12:23:47

 

——中米貿易摩擦は持久戦になると思いますか。今後も米国が貿易保護主義政策を改めない場合、世界経済にどのような影響を与えるでしょうか。 

江原 今回の中米貿易紛争で利益を得る国地域、漁夫の利を得る国地域はありません。WTOルールによらないアメリカファーストは、世界貿易の発展への挑戦とする報道や識者が少なくありません。このまま中米貿易摩擦が長引けば、そのマイナス影響は、米国の方が大きくなる可能性か高いとみられます。中米貿易摩擦といわれますが、現実はますます米国対世界の貿易摩擦となってきています。この点、米国の意図に反した結果を招来し、世界経済のガバナンスの形成で米国の影響力が低下することになるとみられます。

 ただ注意しなくてはいけないのは、中米貿易摩擦なのか、中トランプ大統領貿易摩擦なのかという視点です。トランプ政権の発動した今回の措置を歓迎する米国民、米国企業は多くないのが現状で、また、中国は言うに及ばず、EU、カナダ、メキシコ、ノルウェー、インド、ロシア、スイスなどが、今回の米国の発動した措置に対してWTOに提訴していることから、米国はいわば世界を相手に「四面楚歌」になる可能性が否定できないでしょう。

71日、中日印とASEAN(東南アジア諸国連合)など16カ国が東京でRCEP(東アジア地域包括的経済連携)第5回閣僚会合を開いた。会議で発表された共同メディア声明では、目下の世界貿易は反グローバリズムへの挑戦という背景の下、早期にRCEPによる交渉を終えることが重要だとされた

——5月の李克強総理訪日で、中日両国政府はさまざまな分野での協力に関する協定を結び、中日両国を含むRCEPの協議でも明確な進展がありそうです。この状況下で、自由貿易体制を守って米国の貿易保護主義が中日にもたらすマイナスの影響を最小限に抑えるため、両国はどういった方面での協力を強化すべきだと思いますか。

江原 RCEPについては、同構成国の経済規模の世界経済全体に占める割合が30%と大きいことなどから、交渉が進展し妥結の目途がつけば、世界経済の発展、自由貿易制度維持、WTO精神の発揮に大きな福音になると期待できます。今年7月に東京で開催されたRCEP5回閣僚会合では、RCEP交渉の早期妥結の必要性が強調されるなど、こうした交渉の進展には、現下の米国の保護貿易主義、アメリカファーストへの懸念が反映されていたといえます。

ただ、RCEPには米国が不在であるため、その進展にはRCEP構成国と米国の利害関係が強く反映されるでしょう。世界第2位と第3位の経済規模を有し、自由貿易制度の維持発展で共通する日中両国は、RCEP交渉をリードすると同時に、日中韓FTA(自由貿易協定)の締結交渉においても、その締結に向けて積極的に利害調整を図り、締結の道筋をつけることが肝要です。同時に日本は、協力ウインウインの精神、すなわちグローバリズムに基づく「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」へさらに積極的に参加し、新たなビジネス機会、グローバルサプライチェーンの創出、第三国協力(シルクロード関係国など)を推進し、自国経済の新たな発展の機会を創出し、かつ世界経済の安定的発展へ貢献することが肝要と考えます。

 

 

江原規由

(財)国際貿易投資研究所(ITI)チーフエコノミスト 

1950年生まれ。75年、東京外国語大学卒業、日本貿易振興会(ジェトロ)に入る。香港大学研修、日中経済協会、ジェトロバンコクセンター駐在などを経て、93年、ジェトロ大連事務所を設立、初代所長に就任。98年、大連市旅順名誉市民を授与される。ジェトロ北京センター所長、海外調査部主任調査研究員。2010年上海万博では日本館館長を務めた。 

 

 

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