発展する西部陸海新通道と「中老班列」——東アジアのグローバル・サプライチェーンを変える「一帯一路」

2025-02-27 17:01:00

中国物流研究会幹事 福山秀夫=文  

国物流研究会は、昨年8月25日から9月1日まで西部陸海新通道と中国—ラオス間の「中老班列」の現状を調査した。今回の調査はコスコシッピングロジスティクスジャパンの支援を受けて行われたもので、団員は筆者を含めて4人。欽州に始まり、重慶→昆明→磨(モーハン)と巡ったので、まずは欽州から話を始めたいと思う。 

急速に進展する広西北部湾港 

欽州市は広西チワン(壮)族自治区の都市で、今回は欽州港とそれに隣接する欽州鉄道コンテナセンター東駅を訪問した。欽州港は、中国の全国沿海港湾配置計画上では西南沿海地区港湾群に属する港湾で、広西北部湾国際港務集団(BGPG)が管理を行っている。また、防城港、北海港を加えた3港を一体的に運営する、広西北部湾港の中心港でもある。2023年には約621万TEU(Twenty-foot Equivalent Unitの略で、コンテナを数える単位。長さ20のコンテナ1本=1TEUとする)を取り扱い、世界第30位のコンテナ港湾となり、日本最大の港湾世界第46位の東京港の457万TEUを凌駕(りょうが)している。21年に東京港を追い抜いて以来、わずか3年で世界44位から飛躍し、中国国内でも第8位の港湾に急成長している。その原動力は、西部大開発と「一帯一路」とRCEP(地域的な包括的経済連携)協定の連携を基礎とする集貨戦略にある。重慶成都と欽州港を結ぶ西部大開発の一環である西部陸海新通道と、「一帯一路」の陸のシルクロード上で中国と欧州を結ぶ「中欧班列」の輸送ルートとを重慶や成都で接続し、鉄道を中心とした集貨戦略が推進されている。 

ルートには東通道(重慶~懐化~柳州~北部湾出口)、中通道(重慶~貴陽~南寧~北部湾出口)、西通道(成都~瀘州〈宜賓〉~百色~北部湾出口)の三つがある。欽州港は、埠頭ナンバー1からナンバー6までが有人の巨大コンテナターミナルだが、ナンバー7からナンバー10までは、中国最先端の海鉄連運自動化ターミナルとなっている。しかも、ナンバー9、ナンバー10ターミナルは、コンテナ輸送ビジネス上でのコンテナ船の大型化の流れに対応した2万4000TEU積みの世界最大船型のコンテナ船が着岸可能な、水深マイナス18の大深水ターミナルとなっている。内陸部との輸送は、ターミナルと接続されている欽州港鉄道コンテナセンター東駅を通じて、鉄道で行われている。重慶や成都から来るコンテナ貨物は、全てこの鉄道駅で取り扱っているということだった。25年までの北部湾港の取扱量の目標は1000万TEUであり、これが達成できれば、北米航路や欧州航路のような基幹航路を呼び込むことが可能になるとしている。  

西部陸海新通道は、鉄道だけではなかった。22年8月より、平陸運河が約700億元を投じて建設中であり、2912月竣工予定だ。これが完成すれば、長江に次ぐ河川輸送量第2位の西江と接続され、広州港に向かう西江の年間輸送量約2億のうち、バルク貨物5000万、コンテナ貨物10万TEUを欽州港に取り込むこととなる。河川と海をつなぐことから、江海連運と呼ばれている。 

西部陸海新通道は四つの連携から成り立っている。三港連携(欽州港、防城港、北海港の一体運営)江海連携(平陸運河による河川と海の連携)辺境連携(中国—ベトナム間の「中越班列」や中欧班列の辺境内陸拠点港と北部湾港の連携)海陸連携(海上輸送と鉄道輸送の連運)の四つだ。これらの連携が、中国ASEANクロスボーダー輸送を構築し、中国西部とASEANとの経済圏一体化を確実に推進しており、北部湾港のハブ港化が急速に進展している。 

中国と欧州を結ぶ「渝新欧」 

欽州市を訪問したわれわれは翌日重慶に向かい、重慶鉄道コンテナセンター駅を訪問した。またコスコシッピングロジスティクス重慶の事務所では、渝新欧(重慶)物流有限公司を交えて中欧班列の現状について話を聞いた。「渝新欧」は、中欧班列の渝新欧(重慶新疆欧州)線の全てを取り扱うプラットフォーム会社だ。11年3月の中欧班列第1便出発以降、一貫してその地位を維持している。現在、イエメンの武装勢力フーシ派の船舶攻撃によって、本来スエズ運河を通るはずの多くの船舶が喜望峰回りで輸送している。その影響を受けて中欧班列の利用が急増、「渝新欧」の輸送量も一気に増えた。これに西部陸海新通道、中越班列、中老班列などによる中国ASEANクロスボーダー輸送の盛り上がりも重なって、海上輸送ルートの代替ルートとしてその存在がにわかにクローズアップされてきている。 

重慶には陸海新通道運営有限公司(NLS)という西部陸海新通道貨物を取り扱う企業があるのだが、今回はその会社のヒアリングがかなわなかったため、詳細な実態は把握できなかった。ただ、調査前から資料をかなり収集していたので、概要は事前に把握できていた。西部陸海新通道の主要通路は、重慶から欽州港までの鉄道輸送路だが、鉄道輸送は「渝新欧」が担当し、NLSの業務は海鉄連運貨物の取り扱いに限られているとの説明があった。欽州港でヒアリングしたときには、西部陸海新通道を使う重慶成都からの貨物は全て鉄道で欽州港まで輸送するとの説明があったので、これを「渝新欧」が担当していることが分かり、欽州での調査が裏付けられた。つまりNLSは西部陸海新通道の鉄海連運貨物を取り扱うフォワーダーであり、「渝新欧」は重慶で接続する貨物をコンテナセンター駅へつなぐ鉄道フォワーダーであり、かつプラットフォーム会社であるということだ。 

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