辺境の末端から開放の最前線へ――雲南・河口取材記

2026-06-29 14:38:00

多くの家庭を潤す産業チェーン 

蔡夢瑶=文

商人の姿が見えない「互市」 

八条半村の変貌は、河口口岸(通関地)における産業の活力と切り離しては語れない。その源を探るため、私たちは河口口岸の国境住民互市(小規模越境貿易)サービスセンターを訪れた。 

想像していたような人であふれる市場とは異なり、広々とした場内は人影もまばらで、静けさに包まれていた。 

「今は多くの取引がスマートフォン上で行われているんです」 

河口鎮北山コミュニティー(社区)党総支部書記の李玉龍さんはそう言いながら、スマートフォンを取り出し、「辺互通」というアプリを開いた。画面には各種サービスや申請手続きが一目で分かるように整理されている。 

李さんは私たちを北山国際貨物ヤードへ案内した。そこには中国とベトナムのトラックが整然と並び、作業員たちがベトナム側の車両から青皮バナナや赤肉ドラゴンフルーツ、さらにはスリッパや柔軟剤などを降ろし、中国側の車両へと手際よく積み替えていた。 

李さんは降ろしたばかりのバナナの箱を開け、皮や品質を丁寧に確認する。 

「以前は住民が個別に取引していて、1件当たりの収入は1830元ほどでした」 

彼はそう振り返る。当時は仕入れ先探しから手続きまで全て自分で行わなければならず、いわば労力に見合わない収入であった。 

「今はコミュニティー党組織が中心となって皆を組織化したことで、1回の取引で実際に60~100元の収入増が見込めるようになり、手間も大幅に減りました」 

この「組織化」とは、河口県が模索した新たな仕組みである。具体的には、コミュニティー党組織が主導して個々の住民を「互助グループ」にまとめる。このグループは一種の「サービス窓口」として機能し、海外の仕入れ先の確保や価格交渉、共同輸送の手配などを担う。一方、住民はスマートフォンの「辺互通」アプリで申請するだけで、数分で越境取引を完了できる。複雑な通関や決済手続きは全てシステムが自動処理する。 

「試算では、1世帯で二、三人が安定的に互市貿易に参加すれば、取引だけで年間6000~7000元の収入増になります」 

李さんはそう説明する。この一見小さな安定収入が、多くの国境地域の家庭にとって生活改善の重要な支えとなっている。 

収入機会も多様化している。車を持つ者は運搬で月3000~5000元を稼ぎ、体力のある者は荷役作業で、ドラゴンフルーツ1車分の荷下ろしで80~100元を得る。 

「河口鎮では『辺互通』アプリの登録者が3000人以上おり、そのうち1000人以上が日常的に取引に参加しています。貨物が少ないときは順番制にして、誰もが機会を得て政策の恩恵を受けられるようにしています」と李さんは付け加えた。 

コーヒー豆が生み出す付加価値 

取引が円滑になることで貨物は大量に流入しているが、河口の人々はさらに先を見据えている。単に物が「通過する」だけでなく、「とどまり」、地域発展の原動力へと転換するにはどうすべきか――その答えが「現地加工」である。 

数百離れた北山国際コールドチェーン物流園で、河口嘉通万匯サプライチェーン有限公司の総経理朱昱全さんは、その具体例を示してくれた。工場内には濃厚なコーヒーの香りが漂い、作業員たちが日々コーヒー豆の選別に忙しく従事している。 

「私たちは国境住民の互助グループが輸入したベトナム産ロブスタ豆を仕入れ、ここで加工しています」 

 朱さんはそう説明する。同社は県の国有企業であり、重要な役割の一つは、互助グループが輸入した原料を買い取り、加工によって付加価値を高め、雇用を創出することである。 

「最大の強みは二つあります。一つは、世界最大のロブスタコーヒー生産国であるベトナムに隣接しているため、原料供給が豊富で輸送も容易であること。もう一つは、国が国境地域に与えている政策的優遇です」 

彼の言う「政策的優遇」とは、国境住民が1人1日当たり8000元までの取引額について、輸入段階の付加価値税(13%)が免除される制度を指す。この重要な税負担の軽減が、事業の収益確保と、住民への利益還元を可能にする基盤となっている。 

朱さんは試算を示す。 

「プロジェクトは昨年末に始動し、半年足らずで生産額はすでに4000万元を超えました。この4000万元の背後には、延べ5000人以上の国境住民による取引があります。1件8000元の取引ごとに、参加した住民とその所属する村の共同組織は6570元の収益を得る計算で、これまでに直接的に32万元以上の増収をもたらしました」 

これはあくまで貿易段階に限った数字である。加工工場では、荷役や選別に従事する労働者の多くが地元の住民や越境就労のベトナム人であり、ここでも安定した収入が生まれている。 

この「国境住民互市+現地加工」という革新的モデルは、国境地域の人々が持続的に発展の成果を分かち合うことのできる「共同富裕の仕組み」を構築している。雲南省の統計によれば、昨年、河口県の互市貿易量は34に達し、住民の増収は1347万元に上った。これらの数字の背後には、無数の家庭の生活改善と、国境地域経済の着実な基盤強化がある。 

 

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