李白が見つめた静かな山 詩の伝統を支える紙と墨
古い街の奥に漂う時の香り
宣城の古雅な趣は、水音や墨の香りに満ちた工房だけに宿るのではない。灰色の石を敷き詰めた古い街路や細い路地の奥にも、静かに満ちているのである。
過度に観光開発された古鎮とは異なり、水陽江東岸に位置する水東老街は、時に忘れられながらもなお静かに呼吸を続ける一冊の古書のようである。
街の入口には唐代創建の古い仏寺があり、南側には清代に建てられたカトリック教会がある。仏寺の反り返る屋根と教会の尖塔に掲げられた十字架が通りを挟んで遠く向かい合い、思いがけず東西文化の調和した一景を成している。
磨き上げられた石畳の道を踏みしめて進むと、両側には明・清時代の徽派建築が連なり、その特徴的な防火壁である馬頭壁が高低を成して続き、白壁と黒瓦には歳月の痕が刻まれている。ここには騒がしい商業的気配はなく、代々ここに暮らす人々と、数十年あるいは100年近く続く古い商いがあるのみである。店の多くは2階建ての門構えで、入口には赤いちょうちんが掛けられ、1階には黄色い幌が立ち、手工芸品や土地の特産が売られている。2階の窓辺には色とりどりの衣類や布団が干されている。
細い路地に折れ入ると、午後の日差しが天井の吹き抜けから差し込み、まだらな光と影を落とす。三毛猫が門口で丸くなって昼寝をし、数人のお年寄りが家の前で方言を交えながら世間話に興じている。幾重にも重なる石造りの階段を下りると、二十数㍍にわたる水場が現れ、小さな石のアーチ橋がそれをまたいでいる。この地では代々、「橋の上流で飲み水をくみ、橋の下流で洗い物をする」という生活様式が受け継がれてきた。下流では女性たちが木づちで衣を打つ音が響き、水のせせらぎと重なって、この地のもっとも素朴な律動を奏でている。
家々の門先に置かれた竹のざるには、特産の「水東蜜棗」が並ぶ。琥珀色のナツメには砂糖の結晶が薄くかかり、割れば黄金の糸がほぐれ、口にすれば柔らかく上品な甘さが広がる。路地のあちこちからは芳ばしい香りが漂ってくる。昔ながらの方法で搾られたごま油である。油坊では粗陶の鉢に入れられた油が赤褐色に透き通り、すくい上げると細い糸を引き、香りは深く長く残る。清代の旧宅を改装した皖南民俗博物館には、油灯や糸車、彫刻の施された木製寝台といった往時の生活用品が並び、隣の皮影戯博物館では、職人が手元の影絵を操り、明かりの中で千軍万馬を動かしている。
宣城では、時間の流れが外界よりもゆるやかに感じられる。敬亭山で清茶を手に雲のゆくえを眺めることも、水東老街の古い門廊の下で日なたぼっこをしながら語らうこともできる。日差しが東の壁から西の壁へと移るまで、ただ静かに過ごすのである。分秒を争い、忙しさに追われる日常に疲れた者にとっては、ここは李白と同じように心のよりどころを見いだせる場所となるかもしれない。
人民中国インターネット版
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