公正な目で中国を見る
10年に開催した上海国際博覧会(上海万博)では、江原さんが日本館館長を務めることになった。取材で行った万博会場では、忙しそうな江原さんの姿を見掛けた。当時すでに心臓のバイパス手術を受けていたらしいが、それにより立ち止まる気はなかったようだ。万博期間中は日常的な大量の事務作業に追われていたはずだが、コラムの締め切りに遅れることはなく、さらに当時刊行していた『週刊万博』の日本語版にも寄稿してくれた。日本館を取材する私に付き添い、その見どころを丁寧に紹介してくれた氏の姿は今も記憶に新しい。
さらに江原さんと、万博の歴史から19世紀の英国と中国、ヴィクトリア女王と西太后、そして2人の女性が背負っていた当時の国家の命運にまで話し合った。上海で万博が開催されたことの、中国の歴史と世界の未来に対する意味を氏は特に強調した。江原さんは預言者のように歴史の転換期の到来を予感していたのだ。
江原さんは命をかけて日本館館長の使命を全うした。その後、氏は明らかにやせていったが、相変わらず積極的に中日の経済・貿易交流のために奔走し、中日の協力・ウインウイン事業を呼び掛けた。氏は常に公正に中国の進歩を評価し、同時に反省すべき問題点を指摘する、真の友だった。
12年から中日関係は困難な時期に入ったが、氏は相変わらず中日民間交流に身を投じ、中日関係の早期修復のために尽力した。「一帯一路」イニシアチブについては、これはアジアが国際秩序の再構築の使命を担う重要な地域になったことを意味しており、日本はこのイニシアチブに積極的に応じて国内改革の推進に力を入れなければいけないという見解を述べた。
ウインウイン関係の構築については、「東洋の知恵」と「西洋の論理」を共に重要視する必要があると指摘し、シンクタンクとしての存在感を見せていた。今年の感染拡大後、江原さんは司会として日本の有識者たちと緊急特別シンポジウムを開き、ウイルスの「武漢起源説」について疑問を呈し、中国が講じた効果的な措置は世界が参考にする価値があると評価した。本当に公正で誠実な方だった。
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