この目で見た中国の実情を日本に伝えよう!

2023-05-23 15:29:00

 

労働者の住宅で

石川 それから、解放直後にできた曹楊新村という労働者の住宅地を見ましたね。戸数にして一万二七〇〇戸あるそうですが、そこで糞尿の処理はどうなっていますかと、気のきいた質問をしたところ(笑)―そりゃあみんな下水ですって、かるくいかされてね。

古谷 水洗というわけだね。

石川 ええ、わが団にいるふたりの地方議員がすっかりこれに感心したわけです。

古谷 そうだね。いちばん新しい住宅をみて、びっくりしたんだけど、ちょっと日本の高級アパートのような外観を呈してね、一番下は商店街になってるんだ。

鈴木 どうですか、東京に、あれほどゆったりした敷地にあれほど清潔なアパート、団地がありますか?

大島 そうですね、わたくしの娘が赤羽団地にはじめて住んだんですが、団地の構成、設備は、はなはだ結構にできてるわけです。しかし、庭がないということ、それとねだんが高いということ、これがいちばん大事だと思うんですよ。そうすると、わたしたちの見た上海のいちばん近代的なアパートは、ひじょうに安いわけですね。だいたい賃金の五パーセントなり七パーセントが家賃というわけなんです。で、月給とりにとってこれはいちばん大事なことだと思うんです。三間で、一〇元から一一元の家賃ですよ、ひじょうに安いわけなんですが、そのなかは、まるで東京の日活ホテルみたいなすばらしさでして、三間といっても、炊事場や便所やふろ場をのけた三問で、一間は最低六畳か八畳ぐらいの大きさです。わたしが感心したことは、このアパートの人たちが、みんな付近の発電機工場や、ボイラー工場などたくさんの工場で働いている人たちだということです。東京の中央線で冬はまるで殺されるようなラッシュアワーのなかで生活するわたしたちにとって、天国のような住宅地だと思います。これも、一九五八年以降に畑や荒れ地を改造してつくったところなんだそうです。

古谷 日本だったら団地に住むと買い物なんかに不自由してますが、あそこは買い物が便利なように一階はみな商店街になっておりましたね。鈴木さんがいっしょうけんめい品物見ておったんだが。(笑)


石川賢作氏
石川賢作氏

鈴木 あらゆるものが並んどったね。けっこう繁昌しているようでした。みな楽しそうに買い物してますね。物の不自由ってのは、ないように見受けられましたね。それから、住宅地のメインストリートの幅なんか、大したもんじゃないですか。七、八〇メートルはあるんじゃないですかな、並木が二重にも三重にもなってね。それから縦横に道路があるでしょう。そのなかにいろんな公共施設があってね、映画館がある、幼稚園がある、図書館がある……といったような状態だから、ほんとうの田園都市ですな。


天道正人氏
天道正人氏

河野 わたしはこの曹楊新村で六十一歳のおばあさんにあったんです。この人は養老年金をもらって生活しておる人ですが、そこへいったら、こっちの手をにぎりしめて歓迎してくれました。涙を流して話をしてくれたですね。話をきいてみますと、昔はコジキの生活をしておった、子供を四人持っていたが、うちふたりは生まれてまもなく栄養失調で死んでしまった、食いものはヌカとなっぱのくずで、住むのもカマボコ形の家で電灯もなければ排水もない、上水もない、のみ水ももちろんない、そういった生活をやっておった。残りのふたりの子供も病気にかかったが、医者に見せる金がないので、子供を四人とも失ってしまった。毎日泣きに泣いて、とうとう片目が失明してしまったというのですが、今では、こんな洋館に住ませてもらって、貯金も二〇〇〇元もできた。これはいったいだれのおかげだ、毛主席と中国共産党のいがいにだれがやってくれるんですか、ということを話してくれました。子供はみんな失ったけれども、今ではたのしそうに生活しているわけです。毎日何をしてますかときけば、目を悪くしたから、字を習うことはでけへんと、しかし、近所の人に新聞をよんでもらったり、劇場へいって劇をみたり、京劇をみたり、大衆に奉仕するようなことをやったり、あるいは子供とあそんだりして、楽しい日をすごしておるといってました。

かわいい子供たち

大島 また、上海で少年宮を参観したわけですが、そこで感じさせられたことは、中国の政府がいかに少年少女をたいせつにあつかっておるかということですね。わたしたちの子供にもそういう施設があればまことにうれしいことなんですが、わたしたち親として、自分たちの子供にすまないような気になるほど上海の少年宮はりっぱなんです。この少年宮では小学から初中までの課外の活動がやられ、大衆活動、劇をやったり、ピンポンをやったり、テーマのある学習をやったり、科学とかまた革命の話を先輩にきいたり、生産の問題をきいたり、いろんなことをやっております。


倉田守氏
倉田守氏

石川 あの少年宮にいった時、わたしたちの両がわに、ふたりずつ少年先鋒隊のネッカチーフをまいた小学校の六年生か中学生ぐらいの人たちが、ついてくれたわけですがね、ひじょうに、なんというか、すなおでね、のびのびとしとってその感じがいいですなあ。それはね、あの年ごろの子供だけでなくて、わたしたちが方ぼう託児所や保育院にいったでしょう。そしたらちいさい子供たちが声をそろえて、外国のおじさんごんにちわっていって、手をたたいてむかえてくれるわけです。新しい社会で、新しい人間ができてるということがしみじみと感じられました。ぼくの子供はいま三つですが、朝から晩までアメリカ映画のテレビをみてるわけですなあ、これはいったいどうなるかとおもって、親として、ひじょうに心がいたむわけですよ。そういうのとくらべて、中国の子供たちがね、ひじょうにうらやましいですね。やっぱり、われわれは、どうしても子供たちの幸福をただ幼稚園にいれようかどうかというようなことだけじゃなくて、根本的に考えないと、ほんとにりっぱな人間ができないんだと思いますね。


鈴木良一郎氏
鈴木良一郎氏

天道 あのね、なん年前だったか、日本の子供をまもる会の会長だった長田新先生ですね……

古谷 広島大学の教育学の先生ね。

天道 ええ、この方がソ連にゆかれたかえりに上海の文化宮をみられてかえられましてね、涙をながさんばかりにこの少年文化宮のことをはなされたんですが、そのとき、その国その国がどのような国であるか、その国の将来がどうであるかということをみるのには、その国が少年や子供をどのようにあつかっているかということでだいたいわかるといわれたことが、いまだに頭にのこってるんです。わたし今度文化宮にきてみて、先生のことばをおもいだしてまったくそのとおりだと思ったね。

古谷 少年文化宮にいっても、託児所にいってもね、中国の子供たちはだれがいっても握手をするし、ヨチヨチ歩くような子供でさえ、まつわりつくんだもんねえ。ちっともはずかしがらないね。言うべきことはいう。そしてひかえ目にすべきところはちゃんとひかえ目にする。ちゃんと節度をもって、じつにすくすくとのびていますね。

 

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