経済成長の新たな原動力シェアリングエコノミー

2023-05-29 15:06:00
シェアリングエコノミー(1)とは何か?一般的には、遊休資源(2)を持つ機関や個人がその使用権を有償で他人に譲ることで価値を生み出すビジネスモデルを指す。その本質は、使われていない商品や労働力、その他の資源を整理統合して、その使用効率を高めることにある。Web2·0時代以降、よく知られるようになったシェアリングエコノミー。例としては、「Uber(ウーバー)」や「滴滴出行(ディディ·チューシン、以下「ディディ」)」などの配車アプリ(3)、「Airbnb(エアビーアンドビー)」などの民泊サイト、「在行(ザイハン)」「分答(フェンダー)」などの知識·技能共有プラットホームが挙げられる。だが、より多くの人々にとって、シェアリングエコノミーに対する理解は街角にあるシェア自転車から始まった。 

「2016年度中国シェアリングエコノミー発展報告」によると、16年、中国シェアリングエコノミーの市場規模は3兆9450億元に達し、成長率は76·4%だった。国家情報センターも今後数年で、シェアリングエコノミーは中国で年平均40%ほどの成長速度を維持し、20年には取引規模が国内総生産(GDP)の10%以上を占めることになると予測している。 

現在あるいは今後、シェアリングエコノミーはわれわれの生活に一体どんな変化を引き起こすのだろうか?これから皆さんに詳しく解説したい。 

特集1 自転車がブームを先導

高原=文 

いつからだろう、中国の各大都市の街角にオレンジ色と銀色を組み合わせた自転車が現れたのは。最初、人々はこれを最近流行している自転車ブランドだと思った。だが、後から気がついたのだ。この「摩拝(モバイク)」というシェア自転車は、専用のスマートフォン(スマホ)アプリをダウンロードし、オンラインでデポジット(4)と利用料金を支払えば、誰でもQRコードを読み取って(5)開錠し、自由に利用できるということに。

行政主導で設置された従来の公共自転車とは異なり、シェア自転車は指定の場所に返却する必要がなく、交通カードをつくる必要もない。各自転車に衛星利用測位システム(GPS)が付いており、利用者がどこに停めても、一旦施錠すれば、スマホアプリが課金を停止する。同時に、その自転車は他のユーザーのスマホ内の地図上に現れ、彼らが見付けられるようになる。

新技術や新潮流に最も敏感な80年代生まれや90年代生まれの若者が最初にシェア自転車を利用し始めた。その新鮮さや面白さ、便利さにより、中高年者も続々と利用するようになった。その後、街角のシェア自転車の種類はどんどん増え、シェア雨傘やシェア·モバイルバッテリー、シェア自動車なども機運に乗じて現れた。シェアリングエコノミーに関する社会の議論もそれに伴い繰り広げられた。

多彩な車体が町に出現 

シェア自転車と言えば、モバイクを挙げないわけにはいかない。中国シェア自転車ブームのけん引役であり、モバイクの創業者である胡瑋煒氏はもともと自動車業界の記者だったが、後に科学技術分野の報道に携わるようになった。自動車で出掛ける人がどんどん増え、交通渋滞がますますひどくなる一方、地下鉄駅から住宅街までの「ラストワンマイル」の難題が遅々としてうまく解決されないのを目の当たりにして、彼女は、誰でもどこでも使えるスマートシェア自転車を作るというアイデアを思いついた。15年初めに摩拝科学技術公司を創業。自ら投資家を探し、研究·開発チームを立ち上げ、工場を造り、16年4月、ついにモバイクブランドの自転車を世に送り出した。

現在、モバイクの自転車はすでに第3世代になっており、前後して、エアレスタイヤ(6)やGPS、スマホのQRコード読み取りによる開錠、シャフトドライブ(7)、走行中の充電、ソーラー充電システム、航空宇宙産業用素材を採用した軽量フレームなど、全く新しいデザインの理念を自転車にもたらした。運営開始から1年余りで、100以上の都市で500万台以上の自転車を投入し、1日の最高利用回数は2500万回、登録ユーザーは1億人を超えた。同時に、モバイクは海外進出も開始。今年3月にはシンガポールで、6月には英国のマンチェスターで運営を始めた。報道によると、今年末までにさらに福岡や札幌など日本の10都市にも進出するという。利用料金は30分間100円ほどを予定している。

モバイクの出現は、中国のシェア自転車に急速な発展をもたらした。たった1年間で20種類余りのシェア自転車が街角に出現。初期の「黄色の自転車」から「青色の自転車」「緑色の自転車」、最近ではさらに「虹色の自転車」まで出てきた。シェア自転車が多すぎて、通常の配色はもう使えなくなったとネットユーザーが笑うほどだ。

これにとどまらず、モバイクに想像力をかき立てられた数多くの企業が次々と、シェア雨傘やシェア·モバイルバッテリー、シェア自動車など、各種シェアリング製品を打ち出した。中でもシェア自動車はこれら一連の商品の最たるものといえるだろう。デポジット1500元と1㌔につき2元+1分につき0·3元という利用料金は、確かに利用者のシェアリング製品に対する信頼度と受け入れ度を試すものだ。

違法企業がデポジットをだまし取る手段ではないかという疑念と心配があった初期から、退職したおじいさんがシェア自転車に乗って野菜の買い出しに行くようになった現在まで、市場の成熟に伴って利用者の態度にも急激な変化が起こっている。特筆に値するのは、今では若者たちが自発的に「モバイクハンター」チームを組織していることだ。彼らは、余暇を利用して各所を「巡回」し、駐輪違反のモバイクの自転車を通報することで信用ポイントを得る。この信用ポイントには今のところ特に実際の使い道はない。しかし、シェアリング製品に対する若者の賛同と思い入れは、これらの新しいものに対するさらなる期待をわれわれに抱かせてくれる。

北京の街では、シェア自転車が人々の外出の際の新たな交通手段となっている
北京の街では、シェア自転車が人々の外出の際の新たな交通手段となっている
スマホアプリを使ってQRコードを読み取るだけでシェア自転車を手軽に利用できる
スマホアプリを使ってQRコードを読み取るだけでシェア自転車を手軽に利用できる
 

「詰め」の段階が到来 

資本と企業が大量に流入したことにより、シェア自転車分野の競争は非常に激しくなり、価格戦を繰り広げざるを得ない状況になった。デポジット299元、利用料金30分間1元から、デポジットなし、期間限定の無料利用まで、今ではさらに「ご祝儀自転車」キャンペーンまで行われている。ご祝儀自転車とは、スマホ内の地図上でご祝儀マークがついたシェア自転車を見つけて利用すれば、2時間以内なら利用料金が無料になるだけでなく、利用終了後、最高100元のご祝儀がもらえるというものだ。そのため「自転車に乗ってお金を稼いでくるよ」と冗談めかして言う人もいる。

激しい競争によって、各運営企業は絶え間なく料金を値下げし、さらに自転車の大量投入のみに頼って市場を占めようとする。これは、利用者に便利をもたらすが、都市管理には多くのマイナス影響も与えてしまう。例えば、大量の自転車による歩道の占拠や、無秩序な駐輪などだ。一部の企業は質の悪い廉価な自転車を大量に投入し、故障すると、修理コストが制造コストより高いために、回収することよりまず生産強化を考え、それが資源の浪費を引き起こしている。中国自転車協会の公式サイトによると、16年には20社近くの企業が約200万台のシェア自転車を投入し、17年には2000万台近く投入される見込みだという。これらの自転車が廃棄されると、30万㌧近い金属スクラップが生まれ、これは航空母艦5隻分の構造用鋼の重量に相当する。

しかし、このような混乱した状況は競争が「詰め」の段階に入ることによって徐々に解決されるかもしれない。「2016中国シェア自転車市場研究報告」によると、ofo(オフォ、黄色の自転車)が51·2%の市場占有率で安定の業界1位、モバイクが40·1%で2位となっている。ほぼ同時期の「2016年中国モバイルインターネット業界発展分析報告」によると、モバイクの毎月のアクティブユーザー数は313万5000人、1日の料金チャージ回数は10万7900回で、どちらも1位になっている。モバイクとオフォの一体どちらが上を行くか、中国シェア自転車市場の2強争いの局面が今まさに形成されている。特に、モバイクが6億㌦の融資を完了したと宣言して以降、他の企業が上がってくる可能性は徐々に少なくなっている。

この「戦争」の最終的な勝者が誰になろうとも、シェア自転車は中国の都市の姿を変えつつある。高徳地図と交通運輸部(日本の省に相当)科学研究院のデータによると、シェア自転車の登場以降、北京や広州、深圳の交通渋滞はそれぞれ7·4%、4·1%、6·8%低下したという。それと同時に、自転車で出掛ける割合は5·5%から倍の11·6%に伸びている。

レンタルと異なる点は 

シェア自転車およびそれに続くシェア雨傘やシェア自動車といった目新しいものが、一般大衆と投資家のシェアリングエコノミーに対する期待と情熱を引き出した。しかし、これらシェアリング製品がシェアリングエコノミーに属するかどうか、経済と社会に新しい活力をもたらすかどうかについては、議論の余地がある。

中国人民大学公共管理学院の范永茂准教授は次のように説明する。「シェアリングエコノミーの実質は、遊休資源を存分に利用し、ストック経済(8)を活性化することによって、新たな資源の掘削を避けることにあります。しかし現在、中国の都市でシェアリング対象となっているものの多くは、『シェア』という概念を使ってはいますが、往々にして新たな資源や投資を必要としており、既存資源の再利用ではありません」

普通、シェアリングエコノミーはC2C(カスタマー·トゥ·カスタマー、個人と個人の間の電子商取引)の運営モデルを多く採用し、主に個人に向けて取引プラットホームを提供すると考えられている。しかし、現在のシェア自転車やモバイルバッテリーなどは全てB2C(ビジネス·トゥ·カスタマー、企業からユーザーへの電子商取引)のモデルで、企業がユーザーに商品を提供しているため、大量の新商品と資源が生み出されており、デポジットと利用料金を徴収する方法もまた従来のレンタルと本質的な違いはない。

だが、インターネットとの緊密な関係やストック経済の活性化という角度から見ると、これらのシェアリング製品もシェアリングエコノミーの一部と考えることができる。例えば、モバイクは自転車に多くのスマート技術を付け加え、その基礎の上に「モバイク+(プラス)」オープンプラットホームを構築し、電気通信や金融、旅行、健康、ホテルといった多数の分野の企業と協力を展開しつつある。この背後にあるビッグデータ(9)のプラットホームでは毎日、100以上の都市の延べ2500万人以上の外出データを記録し、異なる都市の異なる年齢のユーザーの自転車利用時間や頻度、距離、目的地などについて整理·分析を行っている。

一方、オフォでは従来の自転車にダイヤル式ロックを付ける方法でシェア自転車を生産しており、生産を請け負う多くの自転車工場がこれにより立ち直ることができた。つまり、インターネット技術を利用して従来の製造業に新しいアウトプットの道を探し出したと言うことができる。

現在流行中のこれらのシェアリング製品は登場からまだ1、2年しか経っていない。これらがシェアリングエコノミーの範囲に含まれるのか、経済と社会の発展に新しい原動力を提供し続けられるのか、まだ時間という試練を経る必要がある。

深圳の街頭に現れたQRコード読み取りで使えるシェア雨傘(写真·楊琦)
深圳の街頭に現れたQRコード読み取りで使えるシェア雨傘(写真·楊琦)
北京のシェア自動車スタンドにて、QRコードを読み取ってシェア自動車を利用するユーザー
北京のシェア自動車スタンドにて、QRコードを読み取ってシェア自動車を利用するユーザー
数社のシェア自転車会社がそれぞれのイメージカラーのシェア自転車を打ち出している。北京ではオレンジ色のモバイクと黄色のオフォが最も多い
数社のシェア自転車会社がそれぞれのイメージカラーのシェア自転車を打ち出している。北京ではオレンジ色のモバイクと黄色のオフォが最も多い

 

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