経済成長の新たな原動力シェアリングエコノミー
特集3 知識共有が変える生活
尹莉=文
中国では、配車サービスや空き部屋短期レンタルといった概念がすでに広く受け入れられている。今年になって、さらに「時間と技能のシェア」という概念が登場し、VC(ベンチャーキャピタル)から注目を集めている。これらシェアリングサービスの内容とモデルは、現代人にインターネットを通じて需給のニーズを満たす人間関係を構築させるだけでなく、新しい経済運営と発展傾向をも形成しつつある。
専門家探しもスマホで楽々
どうしたら楽しさでいっぱいの家族旅行の計画を立てられるだろうか? 子どもの学校はインターナショナルがいいだろうか、それとも公立がいいだろうか? うつ病になったかもしれない、カウンセラーにかかる必要があるのではないだろうか? こんな問題が起こったとき、以前なら家族や友人に聞いたり、あちこちで専門家に相談したりしていただろう。だが今は、知識共有型のスマホアプリさえ使えばすぐに解決できる。
「ショッピングはタオバオで、専門家探しは『ザイハン』で」。知識共有プラットホーム「ザイハン」が打ち出したスローガンだ。数百元を支払うだけで、専門家とマンツーマンで直接面談することが可能で、専門家は顧客の疑問に答え、アドバイスを与えるが、顧客が満足しなかった場合は「安心返金保証(12)」を利用できる。シェアリング時代においては、未知の事柄に直面したときでも、誰もおろおろする必要はない。なぜなら、インターネットのプラットホームがあらゆる人々の運命をつなぎ合わせており、一部の人々の切実に渇望するものは往々にして別の一部の人々の供給できる範囲にあるからだ。
「中国のディスカバリーチャンネルになること」を目標としている「果殻網」は16年4月、有料の音声Q&Aアプリ「フェンダー」を世に送り出した。ユーザーは同アプリ上で自己紹介あるいは得意分野を説明し、有料Q&Aの価格を設定する。それに対し、興味を持った他のユーザーが有料で質問できるというものだ。ここで情報を得る人には2種類いる。一つは早急に回答を必要としており、「懸賞金」を支払う質問者。もう一つは好奇心から、少額の費用を支払って過去の質問の回答を共有する聴講者だ。有名人効果と高い娯楽性により、「フェンダー」はあっという間にインターネット上で人気を獲得した。中でも最も注目されたのは、今年、フォーブスの中国富豪ランキング1位になった王健林氏の息子、王思聡氏がそこで32件の質問に答えて23万元を稼いだことだ。「フェンダー」の初志は知識の伝授にある。しかし、現在プラットホーム上にある質問の大部分は娯楽的なもので、主に人々の好奇心を満たすために利用されている。
配車サービスや民泊が使われていない実物の資源をシェアしているとすれば、「ザイハン」「フェンダー」「約単(ユエタン)」といったプラットホームの趣旨は、時間や知識、技能のシェアにある。これらのプラットホームは資源のシェアリングにおける「人」の巨大な市場価値に照準を合わせ、ユーザーが個人の時間や知識、技能をシェアして、他人にサービスを提供するよう推奨している。
より自由なライフスタイルに
農業革命と工業革命が前後して人類を固定の土地と固定の仕事場に制限したことにより、われわれは皆自分をもっと専門化しよう、産業チェーンの中の「部品」になろうと努めている。だが、ポスト工業社会では、サービス業が徐々に最大の産業になってきた。サービス業は生産に関わらず、そこで取引される大部分は個人の技能や知識、時間だ。インターネットの発展がさらにこういったサービス業の発展に有力な後ろ盾を提供し、需要側と供給側の情報不均衡という問題の解決を助け、独立した個人の間で直接コミュニケーションできるようにした。
例えば、英語教育プラットホーム「VIPKID」はインターネットを使って、英語学習を必要とする中国の子どもと北米の外国人教師をつなげた。130元ほどを支払うだけで、音声や映像、教育ソフトを使った25分間の双方向オンライン授業を通じて、子どもたちは北米の外国人教師とマンツーマンで米国の小学校のカリキュラムを学ぶ機会を得られる。データによると、今年6月時点で、中国のオンライン教育のユーザー規模は1億1800万人に達した。去年末と比較して、たった半年で800万人近くも増加したことは、大きな需要を示している。
従来のビジネスモデルは「労働者―企業―消費者」だが、シェアリングエコノミーのビジネスモデルでは「労働者―共有プラットホーム―消費者」となる。このような発展の動向に照らせば、将来、企業のビジネスにおける役割は弱体化し、資源を持つ人とニーズを持つ人が共有プラットホームで直接取引を完了するようになるかもしれない。
馬歓さんはもともとジムのトレーナーだった。彼は、「ユエタン」での伴走の収入がジムのトレーナーよりずっと高いことに気が付き、会社を辞め、専門的に注文を受けて伴走サービスをするようになった。それから彼の生活は以前のパターン化したものではなくなった。このような新型のシェアリングエコノミーのビジネスモデルによって、人々は社会化した生産の中から離れ、シェアリングエコノミーの中の「自由人」となっている。
これらシェアリングエコノミーのプラットホームを通じて、人々は自分に最も適したライフスタイルを見つけ、異なる範囲の友人と知り合い、新しい技能や就業の機会を得ている。シェアリングエコノミーは経済モデルの革新というだけでなく、ライフスタイルの変化でもあるのだ。
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