経済成長の新たな原動力シェアリングエコノミー

2023-05-29 15:06:00

特集2 サービスの現地化進む

高原=文 

シェア自転車やシェア自動車にある程度従来のレンタル業の性質があるとすれば、エアビーアンドビーやウーバーを代表とする共有プラットホームはより純粋なシェアリングエコノミーの代表と見なされている。エアビーアンドビーにおいて、誰もがホストになれると同時にゲストになることもできるのと同様に、ウーバーのユーザーは車の所有者や運転手になれると同時に乗客になることもできる。これらのプラットホームの趣旨は、個人が所有する遊休資源を取り出して有料で共有することを奨励する点にあり、社会資源の利用効率を高めるだけでなく、需給双方の地位の平等をも促進する。

これらの国際的な共有プラットホームは中国に参入してから、まず若者たちに認められ、その後徐々に普及して、人々のライフスタイルと思考習慣を大きく変えた。同時に、現地でも模倣者が大量に出現した。彼らは中国における自分たちの既存の資源と中国人ユーザー心理に対する深い理解を生かして、すぐに優勢を占めた。これら現地の模倣者がシェアリングエコノミーの精神を中国で変質させてしまうのではないかと心配する者もいる。本当にそのような結果になるのだろうか?

旅行の概念が変わった 

エアビーアンドビーは08年8月に米国サンフランシスコで創業した、バケーションレンタル(民泊)のプラットホームだ。公式サイトによると、全世界191の国と地区、6万5000都市で旅行者に100万室に上る空き部屋を提供しており、中にはマンションや別荘、城、さらにはツリーハウス(10)まである。

15年にエアビーアンドビーが正式に中国に参入すると、大都市の80年代·90年代生まれの若者がまずファンになった(11)。中高年の中国人旅行者は他人の家に泊まることにあまり慣れておらず、しかもネット連絡だけでそこに泊まるという方法にもかなりの懸念と不信感を抱いてしまう。一方、若者は彼らに比べてオープンで、民泊ならではの溶けこむような文化体験を好み、ガイドではなくホストに付いて知らない町を探索するのが好きだ。そういうわけで、現在若者は主に海外旅行の際、同サービスでの宿探しを考えるようになっている。

広州在住のサンディーさんがSNSサイト「豆瓣網(ドウバン)」で民泊体験をつづっていた。彼女が初めてエアビーアンドビーを利用したのは3年前に台湾へ行ったときのこと。それほど深く考えずに高雄の西子湾付近にある部屋を予約した。そこに大きなベランダがあり、ベランダの外が一面の海だったからだ。

「ホストは哲学科の大学院生で、内気な感じの男性でした。朝、彼はキッチンで私たちにパンを焼いて、目玉焼きを作って、どんな味のコーヒーが好きかとほほ笑みながら聞きました。コーヒーに関して、あれは特別な酸味があるとか、これは苦味の中に甘みがあるとか、彼はすらすらと説明してくれました。初めてあんなにたくさんのコーヒーの知識を学びました。また、彼とコーヒーにまつわる話や彼とゲストにまつわる話も私たちに語ってくれました」とサンディーさん。

「それからというもの、旅行のときはほぼエアビーアンドビーを使っています。旅行中、面白いホストと知り合えるのがうれしい。たとえ一晩だけでも、彼らの人生を見て、彼らの物語を聞いてみたい。今でも、台湾の高雄の部屋のソファや大きな本棚、それから波がきらめく朝の西子湾と濃厚なコーヒーの香りを思い出せます。もちろん、ホストのはにかんだ笑顔も。本当に素晴らしいことだと思います」

エアビーアンドビーのデータによると、16年に同サービスを利用した中国大陸の出境旅行者は延べ160万人近く、前年比142%の増加だった。彼らが民泊予約をした国と地区は多い順に、日本、中国台湾、米国、タイ、韓国、オーストラリア、中国香港、イタリア、ニュージーランド、英国だった。90%を超える旅行者がネットのプラットホームを通じてホスト側と連絡を取った経験に満足しており、82%が今後もこのような民泊のシェアリングサービスを選ぶとしている。

同時に、調査によると、このような民泊を好む旅行者は15歳から44歳の間に集中しており、中でも80年代·90年代生まれの若者が消費の主力で、ユーザー総数の83%を占めていることが分かった。

車の相乗りが急速に流行 

09年に創業したウーバーが世界各地でタクシーの運営モデルに変化を起こしていたときのこと。12年9月、ある中国企業がいち早く中国大陸でウーバーを模倣し、タクシーや自家用車、相乗りサービス全てをひっくるめたネット配車プラットホームであるディディを発表した。ウーバーとの競争においてディディは最終的に勝利し、今では全面的に人々の生活に溶け込んでいる。そのお陰で乗客はさらに便利で安く車で出掛けることができ、車の所有者は乗客を乗せることで小遣いを稼ぐことができるようになった。ウインウインなのである。

北京在住の姚さんは微信(WeChat、中国版LINE)のモーメンツ上で、ある夜の面白い配車体験をつづった。その日、彼はいつものように出掛ける前にディディを利用して相乗りサービスを予約した。間もなく、運転手が電話をかけてきた。車が大きすぎて入れないから、団地の入口まで出てきて乗車してほしい、とのこと。姚さんは、団地にさえ入れないなんて、どんな高級車が来たんだろうと思った。入口に着いた彼は驚いた。定員40人の大型バスが来ていたからだ。

ディディの相乗りサービスの運転手は、自分の予定に基づいて予約を受ける自家用車の所有者が多い。中には、余暇を利用してわざわざ車を出して商売する人もいる。彼らの基本情報や車のナンバー、予約受付状況は全てプラットホーム上に登録され、走行経路も全てGPSで記録される。そのため、乗客はこのような相乗りサービスに対して大抵割りと安心している。たまに想像を超えるタイプの車に当たる場合もあるが。

毎日ほぼ同じルートで通勤するため、車の所有者と乗客がディディを通じてよく一緒になり、何度も会ううちに友達になることもある。IT業界で働く龍龍さんはQ&Aサイト「知乎網(ジーフー)」で自分と車の所有者のエピソードを披露した。彼女はほぼ毎日ある所有者の相乗りサービスを利用して出勤し、決まったルートを通っていた。ある日、彼女はその人がルートを変えたことに気付いた。その結果、いつもよりずっと早く目的地に着いた。龍龍さんは不思議に思って、どうやってそのルートを見つけたのか聞いた。彼はこう答えた。前回、別の車の相乗りサービスを利用して出勤したとき、その車の所有者はとあるスマホ地図アプリの会社でビッグデータのエンジニアをしている人だった。その人がデータに基づいて、出勤時間帯に渋滞の確率が最も低いのはその道であることを導き出したのだと。

龍龍さんはさらに次のように語る。相乗りサービスの利用で最も大切なのは車の所有者と乗客の交流だ。このサービスを利用したら、おしゃべりを始めてほしい。移動しながらおしゃべりをして友達ができるのは、なんて素晴らしい体験だろう。本来なら毎日同じ道を通っていてもすれ違ってしまう人たちが、相乗りサービスで結ばれるなんて、とても不思議な縁だ。

ディディは乗客と自家用車の所有者に恩恵をもたらすと当時に、従来の方法で運営するタクシーに生き残っていくための大きなプレッシャーを与えた。同じ条件の下では、タクシー費用の方がかなり高くなるからだ。そのため、各地からタクシー運転手による排斥や抗議の声が伝わってきた。しかし時間が経つにつれて、大部分のタクシー運転手はより多くの予約獲得や空車状態の減少のため、逆に積極的にディディのプラットホームに参加するようになった。

2015年に中国に進出したエアビーアンドビーは若い旅行者の間で大いに人気を博している
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退勤後、スマホでディディを利用すれば、便利で安価な相乗りサービスを使って帰宅できる
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優位性を保つ現地企業 

国際的に勢い良く発展しているウーバーとエアビーアンドビーは、評価額がそれぞれ600億㌦と300億㌦を超えている。しかし、彼らの中国大陸での業務はそれほど順調ではなく、前後して中国の現地企業に先を越されてしまった。

エアビーアンドビーは、「螞蟻短租」や「小猪短租」「游天下」など中国国内の民泊共有プラットホームの台頭を促した。中でも、螞蟻短租は現在、中国の300以上の都市で業務を展開し、プラットホーム上には30万件を超える空き部屋情報がある。一方、エアビーアンドビーの情報は約8万件しかない。中国大陸の民泊シェアリングサービスの市場環境はまだ成熟しておらず、ゲストとホストの双方に自律性が欠けている。そのため、螞蟻短租などの企業は次々とエアビーアンドビー方式のC2Cプラットホームからモデル転換し、ホストの審査と統一管理を強化したり、「途家(トゥージア)」のようにいっそのこと不動産会社から販売前のマンションを手に入れ、サービスマンションに改造し、ばらばらに貸し出したりするというB2Cの道を進むようになった。このようなC2CからB2Cへの転換は多くの人々から疑問視され、シェアリングエコノミーの精神から逸脱したと思われた。しかし実際のところ、これは中国独特の現象ではない。14年、米国はエアビーアンドビーのニューヨークでの売上高1億6800万㌦のうち、3分の1がホテル経営者のポケットに入ったと明らかにした。英国の新聞『ガーディアン』は、アムステルダムやロンドン、バルセロナなどの都市の専業経営者の営業収入はすでにエアビーアンドビーのその都市での取引額の3分の1を超えており、なかには50%を超えているところもあると指摘した。

一方、ウーバーは中国のライバルより1年半遅れて中国大陸の市場に登場した。一分一秒を争うインターネット時代において、これはもうかなりの劣勢だった。しかも完璧さを求めたウーバーは、2年で業務開拓した都市が20余りに過ぎなかった。その間にディディは800万人の車の所有者と2億人のユーザーを獲得していた。ウーバーは新しい町に参入し、「やって来たよ!」と元気に叫ぶと同時に、そこの人々がすでに半年以上もディディを使っていることに気付くのだった。

このほか、ユーザー心理の理解についても、ウーバーは現地のディディにかなわなかった。例えば、ウーバーの運転手は予約を受ける前に、乗客の現在地しか知ることができず、目的地がどこか分からない。一方、ディディの運転手は同時に出発地と目的地を知ることができ、これにより、選んで予約を受けることができる。余暇を利用して予約を受ける、時間に限りのある自家用車の所有者にとっては、後者の方が明らかに合理的だ。

こう見ると、ウーバーの中国事業が最終的にディディに買収されたのも意外なことではなかったと思える。

シェアリングエコノミー時代において、ほぼ全ての多国籍インターネット企業が中国で現地の競争相手に勝つことができなかった。より豊かな現地資源の蓄積と現地ユーザーの心理に対する深い理解が、これら中国の現地企業が成功したキーポイントだ。これら「先天的な優位性」を持つ中国企業に直面して、多国籍企業がもし中国市場に参入したいと考えるなら、中国企業と競争するよりも協力するという選択の方が賢明かもしれない。では、中国の遺伝子を注入されたシェアリングエコノミーは、「虎に翼を添えたように」新たな発展を迎えるのか、それとも「換骨奪胎」して徹底的に改造されるのか? その証明には時間が必要だろう。少なくとも今のところ、シェアリングエコノミーと中国市場、中国の人々は互いに影響を与え合っている。

浙江省嘉興学院のバスケットボールコートのそばに設けられた「シェアバスケットボール」カウンター。「スポーツ·シェアリング」が人々の生活に現れつつある(東方IC)
浙江省嘉興学院のバスケットボールコートのそばに設けられた「シェアバスケットボール」カウンター。「スポーツ·シェアリング」が人々の生活に現れつつある(東方IC)
上海の街頭に現れたシェア洗濯機(東方IC)
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上海市浦東新区のスーパーのカウンターに現れたシェア·モバイルバッテリー(東方IC)
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