1978～1990年《発展》

平和友好条約に願い

1978年8月12日、中日両国は正式に『中華人民共和国政府と日本国政府との間の平和友好条約』を締結し、法的に『中日共同声明』の諸原則を確認した。『条約』は両国の平和共存、世代友好のために法的な基礎を築き、また両国政府と人民の交流と協力のために強固な懸け橋を構築し、友好関係を世々代々続けて行くという両国人民の共通の願いを掲げた画期的で大きな意味を持ったものだった。 

意義深い鄧小平氏の訪日 

一九七八年八月、『条約』は北京で調印され、同年十月、鄧小平氏が日本を公式訪問した。

八日間の訪問中に、鄧氏は公式な会談と会見を除いて、スケジュールの重点を現代化企業の見学、企業リーダー、経済界人士、技術管理担当者らとの懇談に置いた。

京都を訪問した際、鄧氏は特に新幹線に乗ってみた。疾走する車内で、随行者が感想を聞くと、鄧氏は率直に「速い。とても速い。後ろからムチで打っているような速さだ。これこそわれわれが求めている速さだ」と語り、「われわれはいま走る必要に迫られている。今回の訪日で現代化とは何か、ということを理解できた」と語った。

また、鄧氏は深い興味を持って、新日鉄、日産自動車、松下電器（当時）という三大企業を見学し、随行した松下の創始者の松下幸之助氏と意見交換した。

見学の途中、鄧氏は突然、松下氏に中国へ投資してもらえまいかと、語りかけた。当時、鎖国状態だった中国に外資企業はなく、想像することもできない話だった。松下氏は一瞬あっけに取られたようだったが、すぐきっぱりと言い切った。「いいですよ。松下は必ず行きます！」

有効利用されたODA

1979年12月、大平正芳首相が訪中し、鄧小平氏に正式に政府開発援助（ODA）による対中援助を申し出た。援助は2つの部分に分けられ、一つは円借款（有償資金協力）で、もう一つは無償資金協力と技術協力だった。援助プロジェクトは、主に鉄道、エネルギー、商品、環境、農業、港湾などの各分野に振り向けられた。2009年末までの援助総額は3兆6412億円に達した。 

環境保護センターに協力 

一九八八年、『平和友好条約』締結十周年を記念して、当時の竹下登首相と李鵬総理は「中日友好環境保護センター」の建設に合意した。同センターは日本政府が提供した百五億円の無償資金と中国政府が支出した六千六百三十万元によって建設された。八年がかりで、一九九六年五月に落成し、供用を開始した。

同センターの総合的な能力向上の過程で、中日環境技術協力が重要な役割を果たした。また日本は無償でセンターの技術者の育成、養成に協力するために、長期·短期駐在の多数の専門家を派遣し、二十四人の中国人技術者を日本での研修に受け入れた。

十数年の発展を経て、環境保護センターは無から有へ、小から大へと、総合力が絶えず強化され、次第に中国環境保護を支える重要な力となった。

現在、中日両国はハイレベルの環境協力メカニズムを構築し、両国政府は『環境保護協力協定』を締結し、「中日環境協力総合フォーラム」を設けている。また、無償資金協力プロジェクト「二十一世紀に向けた中日環境協力構想計画」を実施し、中国の百都市で環境情報ネットワークを構築し、大連、重慶、貴陽の三カ所に環境モデル都市を建設した。さらに円借款を利用した環境保護プロジェクトを実施し、多国間·地域環境協力メカニズムを利用して東アジア酸性雨モニタリングネットワークなどを建設している。環境協力は両国の協力、交流の中で、最も活発で、最も効果的で、最も潜在能力を持つ分野の一つに数えられている。